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[藤原裕之の金融・経済レポート]

(2019/10/09)

ヤフーのZOZO買収がファッション市場に与える衝撃 ~ アパレル各社は自社EC化を急げ

藤原 裕之((一社)日本リサーチ総合研究所 主任研究員)
ヤフーのZOZO買収 ~ファッション市場はどうなる?

 9月12日に発表されたヤフーによるZOZO買収のニュースは筆者を含め、驚きをもって受け止めた人も多かったと思われる。今回の買収でZOZOのトップを退く前澤友作氏が感極まって涙するシーンは印象的であった。

 報道記事の多くはZOZO買収がアマゾン・楽天・ヤフーの3大ECモール間競争に与える影響について書かれている。当然といえば当然である。しかし筆者が気になるのは、ファッション系ECモールの最大手ZOZOが3大ECモール圏に入ることでファッション市場が今後どうなっていくのかという点だ。周知のようにファッション市場は年々縮小傾向にあり、家計の支出構造をみても食料品や通信費と比べて衣料品の優先度は低下傾向にある(図表1)。

 筆者はアパレル系ECのZOZOが3大ECモール入りすることでファッション市場のコモディティ化が進むことを懸念している。ブランドの持つストーリーや世界観を伝える空間がなくなれば、ファッション市場の縮小傾向はますます進むことになる。

図表1 家計の衣料品に対する支出割合


ファッション市場でZOZOが担ってきたもの

 ZOZOの3大モール入りの意味を整理する上で、ZOZOがこれまでファッション市場にどのような価値を提供し、どう変化してきたか振り返っておく必要がある。

~ ZOZO創業時は出品ブランドの世界観を尊重

 一般にファッション市場は、ラグジュアリー市場、トレンド市場、ファストファッション市場の3つに分けられる。近年のファッション市場の縮小は、総合アパレルやセレクトショップなど中間価格帯のトレンド市場の不振を反映したものと言っていい。トレンド市場は高級ブランドのラグジュアリー市場とユニクロを中心とするファストファッション市場に挟まれて苦しい状況にある。

 販売力の低いトレンド市場のアパレルメーカーが行き着く先は百貨店だが、坪効率に伴う売り場縮小、海外ビッグブランドの重視等により、ブランドの世界観を無視した売り方を余儀なくされてきた。そこへ救世主として現れたのが15年ほど前にアパレルECモール「ゾゾタウン」を開設したZOZOだ。筆者は立ち上げ当初のゾゾタウンのサイトを見たことはないが、出品メーカーと綿密な打ち合わせを行い、ブランドの世界観に沿うデザイン作りが行われていたようだ。当時は個性あるデザイナーが立ち上げたブランドも多く、ZOZOはこうした新進気鋭のブランドにも手を差し伸べ、クールな街を作り上げていった。同連載で以前取り上げた農家や漁師の顔が見える産直アプリ「ポケットマルシェ(ポケマル)」のファッション版のようなスタイルだ(参照:[藤原裕之の金融・経済レポート]「産直アプリ『ポケマル』は地方経済活性化につながるか~地場スーパーが持つ『身近なつながり』の力」MARR Online<2018年1月24日>) 。

 近年のZOZOはブランド軽視へ

 出品ブランドの世界観を大切にしながら顧客の支持を集めていったZOZOだが、マザーズ上場(07年)と東証1部上場(12年)を経て出店ブランドが増える中、創業時のブランドの世界観重視のスタイルは徐々に消えていく。

 18年に大きな話題を呼んだ全身を採寸できる「ゾゾスーツ」によるPB事業。同事業は不発という形になったが、ファッションテックはアマゾンも力を入れている分野であり、事業自体は決して悪い戦略ではない。問題は出店ブランドの世界観を尊重してきたZOZOがPB事業に大きく舵を切ることで既存の出品ブランドとの軋轢が生まれたことにある。極めつけが18年末に行った「ZOZO ARIGATO」と銘打つ安売りキャンペーンだ。これがオンワードやユナイテッドアローズなど大手出店ブランドの「ZOZO離れ」につながる。

ZOZOのポジションが変わった ~ポケマル型からアマゾン型へ

 出店ブランドの世界観を軽視するような近年のZOZOの変化は規模拡大に伴う必然的な結果と捉えられなくもない。出店ブランドの世界観を尊重しながらモールを運営するスタイルは決して効率的とは言えないからだ。こうしてZOZOは出店ブランドのストーリー価値を広めるポケマル型から、買い物の利便性と機能性を徹底追求するアマゾン型に価値ポジションが変化した(図表2)。

 これが元ミュージシャンでアートをこよなく愛する前澤氏の望んだ変化だったかどうかは知る由もない。しかし起業ステージからマネジメントのステージに入る中の選択としてアマゾン型への移行は「あり」なのも確かだ。アマゾン型に価値ポジションが変化したZOZOの売却…


■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)

略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社を経て、2008年10月より一般社団法人 日本リサーチ総合研究所 主任研究員。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。

※詳しい経歴・実績はこちら
※お問い合わせ先:hiroyuki.fujiwara@research-soken.or.jp

 

 



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