[藤原裕之の金融・経済レポート]

(2013/09/11)

企業のパラダイム・シフトと雇用流動化の役割

 藤原 裕之((社)日本リサーチ総合研究所 主任研究員)
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雇用流動化はなぜ必要か

 昨今、報道や議論の中で、雇用流動化に関するものが目立つようになった。政府の成長戦略の中でも、雇用改革への取組方針として「失業なき円滑な労働移動」が重要課題として掲げられている。成長力強化の観点からも雇用維持型から労働移動型への切り替えが不可欠との認識が背景にある。

 「雇用流動化が成長力強化に必要」との見方を筆者なりに解釈すると、「企業がパラダイム・シフトを実現するために人が動くことは不可欠だから」となる。パラダイムとは、ゲームのルールであり、問題解決のための「思考の枠組み」である。パラダイム・シフトとは、新しいゲームに移行し、ルールそのものを変えてしまうことを意味する。

 一つのパラダイムの移り変わりを描いたのが図表1である。パラダイムの初期段階(フェーズ1)ではまだ驚きと懐疑の念が入り混じった状態にあるが、パラダイムの理解が進むにつれて多くの問題が解決されるようになる(フェーズ2)。その後、曲線の上に行くほど難しい問題が残るようになり、解決のペースが極端に落ちてくるのが最終段階である(フェーズ3)。ものづくり技術でパラダイムの先頭を走ってきた日本企業は、フェーズ1とフェーズ2を経た後、今は問題解決のペースが落ちるフェーズ3で停滞状態にある。技術がコモディティ化し価格競争に陥っている、仕事の大半がオペレーション中心になる等々、従来のパラダイムが既に寿命を迎えているのは明らかである。



 筆者は、パラダイム・シフトにとって重要な要素は、「ゼロベース思考」「多様な人材」「良い意味での無知」であると考える。新しいパラダイムを発見するのはいつの時代でも「人」であり、多様な価値観を持った人材が主役となる。しかも今はIT・グローバル化により、社会の規範・価値観を離れ、ゼロベースでビジネスを考えられるようになった人たちが手に入れる世界は劇的に広がりつつある。企業がパラダイム・シフトを手に入れるには、根幹である「人」に何を期待し、どう活用するかにかかっており、雇用流動化はその実現にとって不可欠なものとなる。

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