[藤原裕之の金融・経済レポート]

(2014/02/19)

動揺する新興国市場 ~「それでも新興国」のワケ

 藤原 裕之((一社)日本リサーチ総合研究所 主任研究員)
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波乱の新興国市場 ~テーパリング開始の余波

 2014年の市場は波乱含みのスタートとなった。1月上旬発表の米雇用統計が大幅悪化したことで米国株式は大きく下落、円高・ドル安が進行し、日本株も大きく売り込まれた。その余波は新興国市場に飛び火し、1月23日のアルゼンチン・ペソ急落をきっかけにトルコ・リラ、南アフリカ・ランドなど新興国通貨に波及する展開となっている。

 2013年と2014年とではいったい何が変わってきているのか。大きな要因に米国のQE3縮小(テーパリング)があることは間違いない。一般に相場のフェーズは、金融緩和依存相場⇒実体経済回復相場(業績相場)⇒金融引締め相場で整理できるが、テーパリングに着手し始めた今の状態は、金融緩和依存相場から実体経済回復相場への移行過程と捉えられる。市場の関心は実体経済の強さに向けられているため、12月の雇用統計のように特殊要因が働いていても予想を下回る数値が出れば市場センチメントは悪化に向かいやすい(*1)。

 今回のアルゼンチンやトルコの問題は突然出てきたものではない。これまではユーロ危機や日米欧の中央銀行による過剰なまでの金融緩和政策で新興国のリスクが覆い隠されていた。ところが今回のテーパリングで流動性の水位が下がってくると、これまで覆い隠されてきたリスクがより目立ちやすくなり、そこにアルゼンチンやトルコがいたという構図である。

図表1 下落する新興国通貨



*1 (エコノミストリポート)「脆弱さが垣間見える雇用統計」藤原裕之 週刊エコノミスト2014年2月4日号参照



■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現国際投信投資顧問)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社を経て、2008年10月より一般社団法人 日本リサーチ総合研究所 主任研究員。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。

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