[藤原裕之の金融・経済レポート]

(2014/08/06)

期待集まる訪日観光客 ~小売市場底上げにつながるか

 藤原 裕之((一社)日本リサーチ総合研究所 主任研究員)
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訪日観光客 ~増加が見込まれる唯一の顧客層

 人口減少に伴う国内市場の縮小、消費増税、異業種間競争の激化など、小売業界を取り巻く市場環境は日々厳しさを増している。こうした中、国内市場の下支え役として期待を集めるのが訪日観光客である。

 今は増加傾向にあるシニア層も2020年以降になると絶対数で減少に向かう地域が出始めることが予想されている。日本の小売市場にとって訪日観光客は増加が見込まれる唯一の顧客層と言っていい。今後、訪日観光客の存在が小売市場をどう変えていくのか、以下で考察してみたい。

訪日観光客の現状 ~高い支出単価

 訪日外国人の数は震災後一時的に落ち込んだものの、2013年は1,125万人と初めて1,000万の大台に乗り、足元も増加基調にある。(図表1)。円安で日本への旅行が割安になったこと、東南アジア向け観光査証(ビザ)の免除などが追い風となった。現在政府は東南アジア以外の国のビザ免除も検討を進めている。訪日外国人は今後も増加基調が期待され、政府の掲げる「2020年までに2000万人」も現実味を帯びてきた。

 訪日観光客の増加は消費支出の押し上げに貢献している。訪日外国人の旅行中の支出額を推計すると、2013年は1兆2千億円と1兆円台に達し、今年に入ってさらに増加基調にある。外国人客の魅力は消費支出の大きさにある。中国人観光客の団体客が家電製品を複数購入する姿は見慣れた光景になりつつある。日本人が国内観光旅行で消費する額は1人当り約5万円であるのに対し、訪日観光客は滞在期間が長いこともあり、1人当り消費額は約11万円と支出単価は日本人の2倍以上である(観光庁資料より)。

図表1 訪日観光客数と旅行消費額の推移



 ■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現国際投信投資顧問)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社を経て、2008年10月より一般社団法人 日本リサーチ総合研究所 主任研究員。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。

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