[藤原裕之の金融・経済レポート]

(2014/09/17)

人手不足が迫るデフレモデルからの転換

 藤原 裕之((一社)日本リサーチ総合研究所 主任研究員)
  • 無料会員
  • A,B,C,EXコース

人手不足経済の到来

 日本経済は本格的な人手不足経済に突入している。深刻な人手不足を背景に雇用体系を見直す企業が相次いでいる。スターバックスが契約社員を正社員化したのを皮切りに、ユニクロやIKEAなど小売大手中心にパート社員の正社員化が進められている。

 人手不足は単に景気や雇用問題という側面にとどまらない。日本企業に長年染み付いたデフレ時代のビジネスモデルからの転換を迫る重要なサインと理解する必要がある。これから起こるであろう経営環境の劇的な変化を知る上で人手不足問題は重要な鍵を握っている。

人手不足3つの背景

 人手不足とは単に雇用問題だけでなく、人口要因から企業行動にまで至る複合的な要素が絡んだ現象であることを理解する必要がある。

(その1)生産年齢人口の減少

 人手不足の主たる原因は生産年齢人口(15-64歳)の減少にあることはよく知られるところである。日本の生産年齢人口は労働力調査でみると1998年をピークに既に減少トレンドに入っている(図表1)。直近では団塊世代の先頭(1947年生まれ)が65歳入りする2012年に大幅な減少がみられた。団塊世代の退出が一巡する2015年以降も新たに労働市場に入ってくる若者の数が減少する限り生産年齢人口の減少は避けられない状況にある。

 今回の人手不足は「突然やってきた」と感じる人も多いようである。しかし同データから分かるように、生産年齢人口の減少は15年前からすでに始まっていた。それでも人手不足が顕在化しなかったのは20年も続いたデフレ不況で需要が縮小していたためである。それがアベノミクスで景気が上向き、さらに団塊世代の退出が重なったことで、長年覆い隠されてきた人手不足問題が一気に噴き出したのが今の状況である。

図表1 生産年齢人口(15-64歳)の推移



 ■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現国際投信投資顧問)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社を経て、2008年10月より一般社団法人 日本リサーチ総合研究所 主任研究員。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。

※詳しい経歴・実績はこちら





 

続きをご覧いただくにはログインして下さい

この記事は、無料会員も含め、全コースでお読みいただけます。

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事