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(2023/06/22)

上場市場と金融審「公開買付制度・大量保有報告制度等WG」への期待

マール企業価値研究グループ
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はじめに

 6月5日に開催された金融審議会において、公開買付規制(TOB規制)の本格的な見直し等に向けた議論がスタートした。夏秋冬の議論を経て、早ければ2024年の次期通常国会で金商法改正案が審議される見通しである。金融審では、①TOB規制の市場内取引等への適用範囲拡大、②大量保有報告制度の実効性確保策、③実質株主の透明性確保、の3点が主に議論される。

 TOBは上場企業株式の公開買付けによる支配権獲得だから、この議論は、当該株式が取引される上場市場の在り方、ひいては、上場企業の在り方と密接な関係にある。本稿では、およそ17年ぶりとなるTOB規制の見直しに際して、わが国上場市場のあるべき行方を踏まえ、上場企業の企業価値向上に資するために、上記3点の制度改正がいかにあるべきかを論じてみたい。

1.わが国の上場市場、上場企業の状況

(1)欧米対比で数多く、収益性やPBRが低い上場企業

 先進国の上場企業数は、カナダやシンガポールなどスタートアップ支援・誘致で上場企業数を増やしている国を除き、ここ20年で大きく減少した。上場企業数減少の結果、米国では上場企業の大型化と利益率上昇が顕著となった(図表1)。他方、わが国の経済規模対比の上場企業数は米英独仏の4倍程度と多く、すそ野が広い分、収益率が低く、平均PBRも低い(図表2)。

(図表1)上場企業数の推移
(図表1)上場企業数の推移

(出所)変貌する米国上場市場におけるマーケットの自浄作用(後藤 潤一郎 2020 年 1 月 30 日 東証ワーキングペーパーVol. 33)

(図表2)各国の上場企業の状況の整理
 上場企業数(2020年、米国のみ22年)(A)名目GDP(兆$、2022年)(B)A/B倍考え得る理由PBR1倍割れ企業の比率


米国(NASDAQ、NYSE)639125.5251先進国と新興国の大国では…5%
日本37544.2887 43%

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