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[M&A戦略と法務]

2017年8月号 274号

(2017/07/18)

M&A契約におけるデュー・ディリジェンスで発見されたリスクへの対処方法

 工藤 竜之進(TMI総合法律事務所 弁護士)

第1.はじめに

  M&A契約の交渉時には、買主サイドでは、デュー・ディリジェンスで発見されたリスクへの対処方法をどのように盛り込むかが重要なポイントとなる。

  デュー・ディリジェンスでリスクが発見されているにもかかわらず、当該リスクに対する適切な対処方法をM&A契約に規定していないと、契約締結後にリスクが顕在化した場合に取引実行の中止や損害の回復等の対処を行うことができず、買主に思わぬ損害が生じるおそれがある。また、この場合、適切な対処方法の規定を怠ったことを理由に、買主の役員が善管注意義務違反に問われることもあり得る。

  そこで、本稿では、(i)M&A契約におけるリスクへの対処方法と、(ii)デュー・ディリジェンスで発見されるリスクのそれぞれについて、分類を整理したうえで、M&A契約におけるリスクへの適切な対処方法について考察することとする。

  なお、本稿では、M&Aの中でも用いられることが多い株式譲渡のスキームを前提に整理を進めるが、その内容は他のスキームにも妥当するものが多い。

第2. M&A契約におけるリスクへの対処方法の分類

(1)概要


  株式を譲り受けることを検討している対象会社(以下「対象会社」という)に対するデュー・ディリジェンスにおいてリスクが発見された場合、買主としてとり得るリスクへの対処方法は、下表のとおりの分類に整理することができる。

  対処方法の分類
a. 契約締結せず(中止)
b. スキーム変更
c. 譲渡価格への反映
d. 買主の義務履行の前提条件
e. 売主の表明保証又は特別補償
f. 売主のクロージング前の誓約事項
g. 売主のクロージング後の誓約事項
h. 解除事由

(2)契約締結せず(中止)

  対処方法の1つ目は、株式譲渡契約を締結せず、M&Aの検討を中止する方法である。

  例えば、デュー・ディリジェンスの結果、対象会社が反社会的勢力と密接な関係を有することが判明した場合、一般的には当該リスクは買主として許容することができないものであるため、株式譲渡契約を締結せず、株式譲渡の検討を中止することになる。

  このように、デュー・ディリジェンスで発見されたリスクが、治癒・解消が困難なものであり、かつ、買主として許容することが困難なものである場合、そもそも契約を締結しないという方法を選択することが考えられる。

(3)スキーム変更

  対処方法の2つ目は、M&Aのスキームを変更する方法である。

  デュー・ディリジェンスで発見されるリスクの中には、スキームを変更することによって遮断できるものも存在する。例えば、対象会社の非主力事業に重大なリスクが存在することが発覚した場合、当該非主力事業以外の事業を会社分割又は事業譲渡によって新会社に承継させ、当該新会社の株式を譲り受けるスキームに変更すれば、非主力事業のリスクを遮断することが可能である。

  このように、スキーム変更によってリスクを遮断できる場合には、スキーム変更がリスクへの対処方法として選択肢となり得る。

(4)譲渡価格への反映

  対処方法の3つ目は、リスクに相当する金額を譲渡価格から減額する方法である。

  例えば、対象会社において、貸借対照表に未計上の損害賠償債務が存在することが発覚した場合に、当該債務相当額を譲渡価格から減額することが考えられる。

  もっとも、このようにリスクを譲渡価格に反映する前提として、当該リスクの金銭的評価が可能であることと、当該リスクが顕在化する蓋然性が高いことが必要となるのが通常である。リスクが顕在化する蓋然性が低い場合、通常、譲渡価格に反映することは売主の理解を得られないためである。

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