(以下、文中、HDはホールディングスの略称)
本稿では、前号(
第174回 建設業界~M&Aにより再編と事業領域拡大が進展する通信工事業界(上)2019年10月号)の「1.はじめに」、「2.事業環境の厳しさを示す建設業界の関連指標」、「3.通信工事大手3社(コムシスHD、協和エクシオ、ミライトHD)によるM&A」に続き、「4.M&Aによりシステム分野へ事業を拡大したNECネッツエスアイ」、「5.M&Aによりアジアでの事業を拡大したJESCOホールディングス」、「6.電話会社が通信工事会社と提携するケースも」を執筆した。
4. M&Aによりシステム分野へ事業を拡大したNECネッツエスアイ
筆者が調べたところ、前号で述べた大手3社(コムシスHD、協和エクシオ、ミライトHD)の他には通信工事を主力事業とする上場企業は見当たらなかった。しかしながら、通信工事を手掛けながらM&Aによって事業領域を拡大してきた事例はあり、ここではNECネッツエスアイ(東証1部上場)について触れてみたい。
NECネッツエスアイは1953年に日本電気(NEC)の電気・通信工事部門が分離独立し日本電気工事として発足した。同社は1980年に日本電気システム建設に商号変更し、1983年に東証2部に株式上場、そして、1992年には東証1部に指定となった。ただ、現在もNECの連結子会社である。
同社では1980年代半ば、いわゆる通信自由化に伴い新しい電話会社からの受注が増加し、1990年代後半には携帯電話基地局工事の受注が大幅に増加した。2004年には事業領域を拡大するため、アウトソーシングサービスの拠点として東京都にデータセンターを開設。2005年には商号を現在のNECネッツエスアイに変更している。2006年にはNEC子会社で通信ネットワークシステム保守・運用サービスのNECテレネットワークスを買収(両社は2007年に合併)し、その後も複数のM&Aを行った(図7参照)。
こうしてNECネッツエスアイは電気・通信工事から