[編集部から]

2014年12月号 242号

(2014/11/15)

次号予告と編集後記(2014年12月号)

次号予告

2015年1月号
特集:金川千尋・信越化学工業会長が語る
    「エクセレント・カンパニーを実現する経営」       
2014年12月15日発売予定

※内容は変更されることがあります。タイトルは仮題です。

編集後記


■M&Aの取材で得体の知れないあるものに戸惑うことが少なくありません。「日本的企業文化」がそれです。なぜ日本ではダイナミックに業界再編が進まないのか、日本企業の海外企業PMIはなぜうまくいかないケースが多いのかとの問いに、「日本的な企業文化が原因でしょう」――そんな掴みどころのない答えが取材相手から返ってくることがよくあるのです。この得体の知れないものの正体は、諸外国とのM&A関連制度の違いを比較しても解明できません。
最近、その正体に迫るには人類学的なアプローチが有効なのではないかと思うようになりました。日本社会に関しては、社会人類学者・中根千枝氏が1967年に『タテ社会の人間関係:単一社会の理論』を発表して話題となったことがあります。グローバルな視野で行われた研究では、76年に『最後の転落』で家族構造と識字率、出産率などを人口統計学的な手法で分析して、10年から20年後にソ連が崩壊することを「予言」したフランスの人口学・家族人類学者エマニュエル・トッド氏が注目を浴びました。各地域の文化的成長、政治イデオロギー、経済動向を根底で条件付けているのは家族構造にみられる人類学的な要件であって、その逆ではないというのがトッド氏の主張で、共産主義体制を選択した国々の主要な家族構造が外婚制共同体家族であったことをデータに基づいて実証しました。日本企業の海外M&Aが増加を続けていますが、人類学的条件の異なる文化モデルの短絡的な導入や押し付けの危険性についてもトッド氏は警告を発しています。(耕)

■これから旬のカキはローマ時代から養殖されていたとか。そのカキ養殖には助け合いの歴史がありました。1970年代のフランスではカキが病気で壊滅的な被害を受けます。その危機を救ったのは宮城産マガキでした。病気に強いこのカキはフランスでの移植に成功、その後カキの大量死が発生する度に提供され、現在フランスのカキの90%はその子孫と言われます。東日本大震災直前にも約5000個が送られるはずでした。震災直後、被災したパートナーの復活を望むフランスのカキ業者達は支援を開始、この活動は「France-Okaeshiプロジェクト」と名付けられたのです。日本人としてありがたくも誇らしい話です。
農林水産業に特化したファンドが増えています。その品種改良技術や生産管理術などは価値ある知財です。災害が頻発する今こそ、カキの養殖業界のような相互扶助だけなく、投資の力で絶対不可欠なこの産業を発展させてほしいと思います。(本)

 

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