仮屋薗 聡一(かりやぞの・そういち)
慶應義塾大学法学部卒、米国ピッツバーグ大学MBA修了。 三和総合研究所での経営戦略コンサルティングを経て、1996年、株式会社グロービスのベンチャーキャピタル事業設立に参画。1号ファンド、ファンドマネジャーを経て、1999年エイパックス・グロービス・パートナーズ設立よりパートナー就任、現在に至る。 2015年7月より一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会会長を務める。 著書に、「機関投資家のためのプライベート・エクイティ」(きんざい)、「ケースで学ぶ起業戦略」(日経BP)、「MBAビジネスプラン」(ダイヤモンド社)、「ベンチャーキャピタリストが語る起業家への提言」(税務研究会)がある。
ベンチャー・エコシステムの確立のために
―― 経済産業省は、世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を生み出し、革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供することを目的としたプログラム、「J-Startup」を2018年6月スタートさせました。J-Startupプログラムでは、有識者が推薦した成長スタートアップ企業を「J-Startup企業」として選定し、大企業やベンチャーキャピタル(VC)、アクセラレーターなどの「J-Startup Supporters」とともに、海外展開も含め官民一丸となって集中的にサポートし、企業価値または時価総額が10億ドル以上となる、未上場ベンチャー企業(ユニコーン)や上場ベンチャー企業を23年までに20社創出するという目標を打ち出しています。イノベーションが最重要課題というのが世界的潮流となり、日本でも第4次ベンチャーブームと言われるほど、ベンチャー企業に追い風が吹いています。15年から日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の会長に就任された仮屋薗さんはベンチャー企業へのリスクキャピタル供給のハブとしてのVCのさまざまな強化策を打ち出してこられましたね。
「15年7月に会長に就任した際、JVCAの取り組みとして3つの重点項目を掲げました。まず1つ目のテーマが、『ベンチャー・エコシステム(生態系)の拡大・発展』です。リーマン・ショックでベンチャー投資資金が激減し、その後回復してきたとは言うものの、一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)がまとめた『ベンチャー白書2018』では、国内VCの17年度投資額(確定値)は1976億円と、前年度比29%増となってはいますが、米国のVC投資が約9兆円、中国が約4兆円といわれ、 GDP(国内総生産)の水準を考えると、日本はまだまだ遅れていると言わざるを得ません
日本経済の成長にとって必要なことは、ベンチャーを育み、イノベーションを生み出すベンチャー・エコシステムの確立であり、その中心的役割を果たすのがVCである、という強い使命感を私たちは共有しています。そのベンチャー・エコシステムの中の主要なハブにVC、ベンチャーキャピタリストがいるわけで、ここの質がやはりエコシステム全体に大きく影響を与えます。そこで、ベンチャー・エコシステムの拡大・発展のための具体的な取り組みとして、ベンチャーキャピタリストの質量を増やすことなどに取り組んできました。
VC業界の10年を振り返りますと、08年リーマン・ショック以後の5年間にVC数が半減し、経験豊かなキャピタリストが業界から去っていきました。13年に打ち出されたアベノミクスの成長戦略によってロボット、再生医療、IoT(モノのインターネット:Internet of Things)など新しい成長テーマが出てくるとともに、優秀な起業家もどんどん現れています。しかしその一方で、ベンチャーキャピタリストの数と能力を上げるには時間がかかります。JVCAでは従来からキャピタリスト養成講座に力を入れてきましたが、それに加えてミドル・シニアクラスのキャピタリスト向けプログラムなどを設けてベンチャーキャピタリストの数と能力の向上に力を入れてきました。
また14年度末(15年3月末)の協会会員数は、VC会員、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)会員、賛助会員(企業や事務所、団体等と個人)を合わせて94でしたが、今ではVCが76社、CVCは42社、賛助会員が81の計199に増えて、業界内での協会のカバレッジを上げて、名実ともにVC業界をしっかりと代表する組織になっています」
メルカリの東証マザーズ市場への株式上場の意義
「重点項目の2点目は、