[【PMI】未上場企業買収後のPMIの実務(エスネットワークス)]
(2017/11/01)
第7回 製造業におけるPMI
1.はじめに
これまでの6回は、上場企業、あるいはPE(ファンド)が未上場企業を買収した際に各業務や機能としてPMIを進めていくうえでの要諦を展開してきました。今回以降は2回にわたって視点を変え「製造業」「飲食業」といった業種別でのPMIのポイントについて記載したいと思います。
第7回となる今回は「製造業」にフォーカスして記載することにします。なお、近年の製造業は、生産拠点を海外に移す、といった施策も多く実施されていますので海外の工場管理に関する論点も今回補足として記載させていただくことにします。
2.製造業の特徴
読者の皆さんは「製造業」と聞くとどのような特徴をイメージするでしょうか?製造業とは、重工業、軽工業に限らず「食品」製造業等も含まれている定義になりますが、概ね当てはまる特徴としては以下のものがあります。
①製造設備や生産技術を有している
②原材料、部品および完成品在庫を有している
③調達、製造、販売といった機能別組織が一般的
④設備投資資金(新規、更新)がかかる
⑤業種にもよるが、繁忙期と閑散期で生産調整をする場合がある
このような製造業の特徴を踏まえ、CFOはどのような点に留意してPMIを遂行する必要があるかを次章から述べていくことにします。
3.在庫の適正化(2.②、④と関連)
製造業において、原則として在庫の保有は不可避です(工場を保有しないいわゆる「ファブレス」であっても「製品(完成品)」在庫は発生します)。原材料や部品在庫がなければ製品が製造できず、完成品在庫がなければ顧客にタイムリーに製品を提供できないためです。そのため、各企業は生産効率化とともに、様々な在庫適正化の方法に取り組んできました。トヨタ自動車の「カンバン方式」は本稿で内容には触れませんが非常に有名な取組です。一般的に在庫適正化とは在庫削減に取り組まなければならないケースが多いため、以下では在庫削減に主にフォーカスした適正化方法について述べてまいります。
(1)在庫適正化(多くは「削減」)の目的
ではなぜ製造業では「在庫適正化(削減)」の取組が必要とされるのでしょうか?結論から先にお話ししますと、営業キャッシュフローの改善に大きな効果をもたらす一つの要素であるからです。
削減対象となる在庫には、もはや陳腐化して利用価値のない「不要在庫」と、まだ回転はしているもの最低限保有残高より多い「余分在庫」に分けられると思います。
「不要在庫」は短期的には、当該在庫を廃棄することで損失という膿出しを行うことになります。中期的には、陳腐化「不要在庫」を許容しない姿勢をとることで後述の「不要在庫」を発生させない仕組みを機能させることで在庫損失リスクを回避することにあります。
「余分在庫」の場合は、削減により必要運転資金が減少しますので、企業内に短期的にも中期的にも余裕資金を発生させる効果があります。
(2)在庫適正化(削減)の方法
在庫適正化(削減)にはいくつかの方法がありますが、買収した(未上場)企業にどの方法が最適かはCFO自身が会社を見てみるまで判断が難しいことは多いことでしょう。現場には、在庫の件だけをとっても、報告書で見るよりも非常に多くの情報があふれています。個々の在庫に内容がわかるタグがついているか、月末の実地棚卸でどのように在庫をカウントして帳票に記載しているか、在庫を取り間違えしやすい運用上のエラーがないか等、確認すべき事項は様々存在します。
では、以下では実際に在庫残高が膨らんでいた要因別に対処方法を記載したいと思います。
①部材/商材別在庫残高が適切に管理できていない
未上場企業を買収した場合…
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■株式会社エスネットワークス
■筆者略歴
熊谷伸吾(くまがい・しんご)
東京大学卒業後、株式会社エスネットワークスに入社。2017年より在シンガポール。シンガポールをハブとして、国内外のPMI(合併・買収後統合実務)、管理機能BPR(ビジネスプロセスの設計/改善)を主に実行。過去に税務(税理士資格は過去に返上)、人事労務、IPO業務の責任者も経験。会計財務だけでなく、幅広い分野でクライアントにアドバイスを実施。IFRS、デューデリジェンス、Valuation等の経験も豊富。日本公認会計士。
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