[マールインタビュー]

2014年4月号 234号

(2014/03/15)

No.166 法務省に出向し、会社法の改正法案の作成に尽力する

 髙木 弘明(西村あさひ法律事務所 弁護士、前法務省民事局参事官室局付)
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髙木 弘明(西村あさひ法律事務所 弁護士、前法務省民事局参事官室局付)

[1]株式買取請求制度の見直し

-- 法務省で会社法改正案の作成に関与されたそうです。マールインタビューでこれまで様々な論点を取り上げてきましたが、株式買取請求制度はまだです。この部分はどう変わるのですか。

  「株式買取請求権は、組織再編(M&A)などにより自己の利益が損なわれると考える少数株主に対して会社から退出の機会を与え、経済的利益を保障するための権利です。制度としては昔からあったのですが、上場会社のM&Aにおいて頻繁に使われ、注目されるようになったのは比較的最近のことです。旧商法の時代に株式交換や会社分割の制度が入り、組織再編が大幅に増えたこと、さらに会社法で買取価格がシナジーを含んだ『公正な価格』となり、株式買取請求制度の少数株主保護としての性格がよりはっきりしたことを背景に、今では活発に利用されるようになっています。その中で、株式買取請求制度に関してこれまであまり意識されていなかった問題点について、注目が集まるようになってきました。そこで、今回、この制度の見直しもテーマの一つにされました」

買取口座の創設

-- 新しく買取口座というものが創設されます。どういうものですか。

   「今、上場企業の組織再編に反対して買取請求をする株主の株式はどうなっているかと言うと、請求をした株主個人の振替口座にそのまま入っています。ですから、株主は請求した後も、その株式を売ろうと思えば市場で自由に売却できます。他方、会社法はどう定めているかと言うと、買取請求をした株主は、会社の承諾を得た場合に限り、その請求を撤回できるとして、撤回を制限しています。つまり、現実の世界と法律の建前が必ずしも整合していないのです。買取りを請求してみたが、途中で気持ちが変わって、市場で売ってしまったという人だけでなく、最初からそこを見越して、とりあえず株式買取請求をしておこうと考える人が出てきてもおかしくない状態にあります。株式買取請求をしようとする株主にとってみれば、株価の動向を見ながら、市場で売るか、会社に買い取ってもらうか、どちらか価格が高い方を選べる状態になっています。そこで、会社法が定めている撤回の制限を実効化するため、振替法を改正して、買取口座を創設するという提案がされました。改正案が原案どおり成立すると、今後、買取請求をする反対株主は、自分の口座から会社が開設する買取口座へ株式の振替申請を行うことが必要となります。いったん買取口座への振替申請をした株主は、会社が撤回を承諾しない限り、その株式を自己の口座に戻すことができなくなりますので、それを市場で売却することができなくなります」

 

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