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2018年9月号 287号

(2018/08/15)

我が国大企業はオープンイノベーションから大きな果実を摘み取れるか

各務 茂夫(東京大学 教授 産学協創推進本部 イノベーション推進部長)
イノベーションの本質:先を見据えリスクを取る

 今からちょうど5年前の夏、ある会合で将棋棋士で永世7冠の羽生義治氏とお会いする機会があった。少し自慢話になるが、羽生氏が将棋の七大タイトルを独占する前年の1995年10月に、竜王・名人(将棋界の2大タイトル)羽生義治と直筆署名の入ったアマチュア5段の免状を頂戴している。私にとっては雲の上の憧れの先生と対面したことになる。
 羽生氏は15歳でプロ棋士になってから47歳の今日まで、なぜ最強棋士の座を保てるのか。この事を考える時、私はイノベーションの本質にも通じる重要な示唆があると感じている。
 羽生氏は「現時点で一番保守的な指し手や作戦は、10年先のことを考えると一番悪い選択のはずです。でも10年先のベストの選択は、今の目で見ると、一番リスクが高いかもしれません。(2009年12月31日発行「100冊の本制作委員会」から引用)」と述べている。将棋の指し手について、「若い時は知らずしてリスクを取っているということがあるが、これが勢いというもので、大きな流れを生むことがある。年を取ると経験を積み、知恵はつく反面、新手を指さなくなってしまう。年をとったら意識して新しい手を指すようにしないといけない。」とも指摘している。藤井聡太七段の勢いはまさに大きな流れを生んでいる。
 羽生氏の指摘を、私はイノベーション創出の観点から、大企業とベンチャー企業とのあるべき関係性のアナロジーとして捉えた。羽生氏の目指すものは、強いて言えば、大企業とベンチャー企業のリスクに対するメンタリティーを一つの会社が併せ持とうとするものだ。但し、これは極めて例外的な羽生氏の天才性のなせる業かもしれない。タイトルが掛かった大勝負で敢えて新手にチャレンジし続ける羽生氏の姿勢はなかなか真似ができない。同様に、大企業そのものがベンチャー企業のマインドを合わせ持つことは難しい。一方で、大企業が目先の最善と想定される戦術に拘っていると、その企業の10年先は先細りで荒れ野に追いやられている可能性が高いのではないか。従って、大企業は自らのリスクに対する避けがたい志向をよくよく踏まえた上で、リスクに立ち向かう若いベンチャー企業の将来の可能性を、自社が持つ戦略的な枠組みの中に意識的に取り込む必要がある。米国の大企業がベンチャー企業を積極果敢にM&A(合併・買収)するのはそのあらわれだ。
 将棋界において史上最強ともいわれる羽生氏。30年以上にわたってトップ棋士である同氏の語る言葉の中に、イノベーション・エコシステム(イノベーションを継続的に生み出す生態系)の本質を感じ取ったが、それは将棋好きの私の曲解かもしれないが。


大企業:自前主義からの転換

 「オープンイノベーション」の重要性が叫ばれて久しい。大企業、大学、大学発ベンチャーの間でいかに戦略的なトライアングルを構築し、イノベーションを実現できるか―これが産学協創推進本部イノベーション推進部長としての筆者の仕事の一つだ。
 大企業と大学との関係は、

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