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[対談・座談会]

2018年6月号 284号

(2018/05/17)

[座談会] M&Aアクティビズムの実際と対応のあるべき姿

【出席者】(五十音順)
 今関 源規(三菱UFJモルガン・スタンレー証券 マネージングディレクター)
 デイビッド スナイダー(シンプソン サッチャー アンド バートレット外国法事務弁護士事務所 パートナー弁護士)
 古田 温子(アイ・アール ジャパン 投資銀行第三本部長)
 石綿 学(森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士) (司会)
左から今関 源規氏、デイビッド スナイダー氏、古田 温子氏、石綿 学氏
左から今関 源規氏、デイビッド スナイダー氏、古田 温子氏、石綿 学氏
<目次>
はじめに
  1. M&Aアクティビズムの動向
    (1)日本における最近の動向
    (2)欧米におけるM&Aアクティビズムの最新動向
  2. アクティビストの手法
  3. アクティビズムに対する法規制
  4. 国内外の投資家・議決権行使助言機関のM&Aアクティビズムに対する見方
  5. 株主・議決権行使助言機関・メディアとのコミュニケーションの方法
  6. PR会社の利用
  7. アクティビストに対する対応
おわりに

はじめに

石綿 「昨今、上場企業を対象とするM&Aに対して、アクティビストが介入する事例、いわゆるM&Aアクティビズムが増えています。コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードが本格稼働し、M&Aアクティビズムへの対応のあるべき姿も変化しています。本座談会では、我が国におけるM&Aアクティビズムの動向や、事業会社としてM&Aアクティビズムに対し、いかに備え、有事においていかに実務対応するかについて、取締役のあるべき行動規範の視点を踏まえ、実務の専門家の皆様に議論していただきます。まず、自己紹介からお願いします」

スナイダー 「シンプソン サッチャー アンド バートレット外国法事務弁護士事務所のスナイダーです。シンプソン サッチャーはニューヨークに本拠を持つ米国の大手法律事務所で、私は東京オフィスの代表として20数年務めて参りました。本日はよろしくお願いします」

今関 「三菱UFJモルガン・スタンレー証券の今関源規(モトノリ)と申します。今日はありがとうございます。M&Aアクティビズムといいますと、遡ること10年ほど前から動きが見られるようになりましたが、その当時からアクティビスト対応などの仕事をいろいろ手掛けています」

古田 「アイ・アール ジャパンの古田です。まさにその10年ほど前、野村證券におりましてアクティビスト対応や企業防衛のFA(フィナンシャル・アドバイザー)をやっていました。今はアイ・アールジャパンで同様の業務に携わっています」

石綿 「本日の司会は、森・濱田松本法律事務所の石綿が務めさせていただきます」

1. M&A アクティビズムの動向

石綿 「昨今、アクティビスト株主が上場企業にM&Aを積極的に促したりする例や、上場企業に対するM&Aの際にアクティビスト株主が介入して買収条件の見直しを迫る例などが増えてきています。このようなM&Aの文脈におけるアクティビズムを『M&Aアクティビズム』と呼びますが、本日は、このM&Aアクティビズムを取り上げたいと思います。先ほど今関さんや古田さんからの話にもありましたように、日本でも従来からアクティビスト株主は存在していました。ただ、最近では、従来型のアクティビスト株主に加えて、欧米流のアプローチをする海外のアクティビスト株主が増えてきました。彼らは資金力が豊富なため、かなり大きい上場企業を対象にすることができたり、極めて短期間に大量の株を取得して、発言力を持つことができるというのが特徴的です。プレゼンも非常に上手で、ホームページやPR会社などを使って公開のキャンペーンをしたり、投資家やメディアなどに積極的に情報提供を行います。そのような新しい動きも含めて、日本や欧米におけるM&Aアクティビズムの最近の動向について、お話しいただければと思います。まず、古田さんから最近の日本のM&Aアクティビズムの動向をご紹介ください」

(1) 日本における最近の動向

古田 「図表は、2016年2月以降、直近までの日本企業のM&A取引に関連したアクティビズムをピックアップしたものです。もちろんこれ以外にM&Aに関連しないアクティビズムはたくさんありますが、ここではM&A関連に絞っています。1つ目の日立製作所によるイタリア鉄道会社STSの買収に際しての米エリオットのケースは、主戦場は日本ではなくて海外で、日立が巻き込まれたという意味で取り上げています。次のパナソニックによるパナホームの完全子会社化は非常に有名なケースです。株式交換で完全子会社化することを発表したのですが、香港のオアシスマネジメントが基本的にはパナホームの価値評価が低いということで反対キャンペーンを展開しました。オアシスの特徴はホームページなどを作って、そこに主張を載せるようなやり方をする点です。攻防の過程で、スキームが株式交換から現金によるTOBに変更され、最終的にディールは成立しています。日本電産のケースは、これはちょっと毛色が変わっていまして、マディ・ウォーターズという空売りのアクティビストが、今の株価は高すぎるとのレポートを公表し、本業が成長しないことを買収によって覆い隠そうとしていると主張しました。次の日立国際電気と米エリオットですが、こちらはKKRによるTOBの延期が公表された後にエリオットの大量保有が発覚しました。その影響と、日立国際電気の業績が好調だったことで株価が上昇し、実際にTOBが開始されてからもTOB価格を上回る株価で推移したという案件です。最終的にはTOBは成立し、エリオットはTOBに応募した模様ですが、エリオットの表立った動きはありませんでした。アルパインとオアシスは、オンゴーイングの案件ですが、こちらも株式交換による統合を公表後、アルパインの価値評価が低いということでオアシスがキャンペーンを行っている案件です。アサツーDKと英シルチェスターは、ベインがアサツーDKをTOBにより完全子会社化することに対してシルチェスターと大株主であるWPPが反対していましたが、最終的にはWPPもシルチェスターも応募してディールが成立しています。あと、村上グループの案件が2つ続いています。黒田電気は、MBKパートナーズによるTOBが成立し、東栄リーファーラインのMBOは、1回目のTOBが発表された後から買い増ししたブロックタイプ(M&Aを阻止する、あるいは条件変更を迫るタイプ)の案件で、結果として1回目は不成立になりましたが、その後価格を引き上げて再度TOBを実施し、村上グループが賛同した案件です。直近では、富士フイルムホールディングスのゼロックス買収に対して、カール・アイカーン氏が反対しています。こうして見ますと2017年以降M&Aアクティビズムが増えているということがわかりますし、やり方も多岐にわたっています。村上グループはそれこそ10年前はどちらかというと株主還元の要求が中心でしたけれども、今は業界再編に絡んだ提案なども増えていますので、国内のアクティビストも海外のアクティビストのやり方と同じような動きをするようになってきていると思います」

(2) 欧米におけるM&Aアクティビズムの最新動向

石綿 「海外にも目を向けたいと思いますが、最近の世界のアクティビズムの動向について、今関さんからお願いします」

存在感の高まり

今関 「先ほどの日本の案件を見てわかる通り、最近のアクティビズムは徐々に変わってきています。昔は、ある程度大量の持ち分を買ったうえでプレッシャーをかけていく手法が一般的で、それは米国もそうでした。今は例えば米国だと持ち分1%だけを買って、買ったことを表明し、様々な提案をし、様々な投資家を巻き込んで企業にアクションをとらせるといった傾向が強まってきています。アクティビズムは米国で大きく広がってきたのですが、最近の特徴として、ヨーロッパ、アジアパシフィックでも絶対額や比率が相当程度増えてきているというのが印象です。当然、ローカルなアクティビストもいれば、米国のアクティビストが他国のマーケットにアプローチをかけるといった傾向も見えます。さらに、アジアパシフィックのなかの内訳はというと、日本が2013年の7件から2017年に28件に増えていて、実はアジアのなかで1番多い。アクティビストにとって1つのターゲット国ということが言えます。

幅広い投資家層で株主アクティビズムの普及

 なぜアクティビストの動きが強まっているのかというと、いわゆるアクティビストによるアクティビズムだけではなくなってきているからです。プロのアクティビストとしてよく名前を挙げられるのはサード・ポイント、エリオット、カール・アイカーン氏などですが、そういったアクティビストと、ヘッジファンドやロング・オンリー・ファンドである公的年金ファンドなどの機関投資家が、アクティビストの主張が正しいと判断すれば同調していくということが起きている。そういう意味で、今までアクティビストだけを気にしていればよかったものが、そのような状況ではなくなっているのです。アクティビストをフォーカスレベルに応じてPrimary Focus、Partial Focus、Occasional Focus、Concerned Shareholder、Otherの5つに分類したデータを見ると、Primary Focusは先ほど名前を挙げた、いわゆる本当のアクティビスト、Partial Focusはヘッジファンドなど、Occasional Focusはロングオンリーも含めてそういう活動をしている方々ですが、2017年は本当のアクティビストの8%に対して、Occasional Focusが45%も声を上げるようになってきています。我々がアクティビストというところの8%のことだけを思い浮かべるのですが、実はマーケットのダイナミズムという意味ではそうではない、ということを我々は理解した方がいいと思います。また、パッシブファンドとアクティブファンドの資金フローでいうと、この15年の間にパッシブファンドへ大量の資金が流入してきていて、このパッシブファンドもアクティビストの主張を聞き始めています。これは米国で起こっている投資マネーの動きですが、当然、米国の投資家も日本に投資をし、外国人株主比率も高まってきているわけで、そういった資金が日本にも入ってきているということは理解しておいた方がいいと思います。

あらゆる企業がターゲットに

 最近、米国で起こっている動きなのですが、例え株価のパフォーマンスがよかったとしても狙われることがあるということです。例えば2017年の米Automatic Data Processing(ADP)。ADPがターゲットとなり、ヘッジファンドの米パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントとプロキシーファイトになりました。最終的にはADPが勝つには勝ったのですが、引き続きパーシング・スクエアはADPに対して『ADPのビジネスモデルは非常に素晴らしい。ただし、もっと儲かるはずだ』と主張して、持ち分を減らさずにエンゲージしていくと言っています。ADPは、S&P500インデックスを十分上回るパフォーマンスを上げているにも関わらず、ターゲットになってしまったわけで、最近のアクティビストの動きは非常に多様化してきていると感じます。

問題視するテーマ

 米国でアクティビストが問題視するテーマとしては、ボード・リレイティッド・アクティビズム、すなわち社外取締役を送らせてほしいとか、役員報酬が高すぎるのではないか、ガバナンスが弱いのではないかといった取締役会関連事項が48%を占めています。一方、日本で主流のバランスシート・アクティビズム、例えばもっと配当しなさいといったテーマは9%。M&Aアクティビズムは12%となっています。今日本で起きている現象は、ほとんどがバランスシートに対する主張と、一部でM&Aが起こったときの主張ですので、まだ米国で起こっていることの一部が日本で起こり始めているという段階だと感じています。

多様化する成功の定義

 アクティビストがどれくらい登場しているのか。米国での過去事例を2009年以降のSchedule13D、すなわち5%超の大量保有報告書の提出状況を調査してみると・・・

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