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[【小説】新興市場M&Aの現実と成功戦略]

2019年3月号 293号

(2019/02/15)

第47回『継続的な人材育成の条件』

神山 友佑(デロイト トーマツ コンサルティング パートナー)

【登場人物】

三芝電器産業 株式会社
Reddy Electricals (照明・配線器具製造子会社) への出向者 (CEO)
狩井 卓郎
Reddy Electricals (照明・配線器具製造子会社) への出向者 (営業管理担当役員)
小里 陽一
Reddy Electricals (照明・配線器具製造子会社) への出向者 (生産管理担当役員)
伊達 伸行
Reddy Electricals (照明・配線器具製造子会社) への出向者 (経営管理担当)
井上 淳二
Reddy Electricals (照明・配線器具製造子会社) への出向者 (経理担当)
朝倉 俊造
佐世保電器 (三芝電器産業の系列販売店舗)
店主 
岩崎 健一
旗艦店の店長
古賀 一作

(会社、業界、登場人物ともに架空のものです)

(前回までのあらすじ)

 三芝電器産業の朝倉俊造はインドへの赴任を命じられた。1年半ほど前に買収したインドの照明・配線器具メーカー(Reddy Electricals)への出向である。
 日本では考えられない様々な課題に悩まされ、そして創業家側の旧経営陣との軋轢を生みながらも、朝倉の先輩である日本人出向者達は、生産革新や流通改革に矢継ぎ早に取り組んでいった。外部の血も取り込みながらPMI=M&A後の経営改革は本格化し、改革の成果を通して、ローカル従業員の経営参画意識も徐々に高まってきた。
 一方で、日本側の事業部や本社は必ずしも当事者意識を有しておらず、駐在員に対して原理原則に基づいた形式的な要求ばかりを押し付けてきていた。そんな中、レッディ社CEOの狩井卓郎は単身帰国し、三芝電器産業社長に「レッディ社を買収した理由」を問いかけた。
 狩井の意図を汲み取った社長は、半年後のレッディ社訪問を約束するとともに、日本の関係部門長に対して自ら直接「レッディ社に対する確認」を実施し、日本側の当事者意識を激変させた。
 社長訪印が迫る中、朝倉をはじめ出向者はこの機会を逃さずにPMIの成果を最大化できるよう、アクセルを踏み込んだ。


社長訪印と人づくり

 三芝電器産業社長の訪印まで3か月を切った中で、朝倉主導で進むBetter Workplace Projectも佳境を迎えつつあった。人づくりの意味合いと、そして優秀層のレッディ社へのロイヤリティ向上に向けた様々な人材育成講座も開設されることになり、準備が進められた。
 そんなある日、伊達と井上とで次年度事業計画の策定方針の打ち合わせをした際に、伊達がふと井上に話しかけた。

早朝計算教室

 「朝倉が企画した『早朝計算教室』があっただろ、あれが先々週から本社工場で始まったんだ」
 「例のワーカー向けのやつですね。もう始まったんですか。準備がよく間に合いましたね」
 井上がそう言うと、伊達は頷きながら話をつづけた。
 「事前の受講登録はあえてせず、最初の週は誰でも自由に教室を覗けるようにしたそうだ。そうしたら最初の2日間は本当に数人しか来なくて、朝倉も講座打ち切りを考えたらしい」
 井上が驚いた表情を示したが、伊達は続けた。
 「しかしだ。参加したワーカーの口コミなのか、翌週から一気にワーカーが押し寄せたらしい。どうも話を聞いてみると、教室で教えてくれる先生もよかったようだ。普段は何をやっている人なのか俺も詳しくは知らないが、昔小学校の先生をしていて、ここ数年は農民や工場ワーカーの生活向上にむけた活動もしている人らしい。今回の講師料も破格のフィーで引き受けてくれたようだ」
 そこまで聞くと井上が思い出したように口を開いた。
 「そうでした、そうでした。現地の相場を私も詳しくは知りませんが、しかし朝倉から申請が上がってきた金額を見て驚きました。少なくともあの金額だけでは食っていけません。最初は人事部経由で外部講師役を探したらしいのですが、プロ講師みたいな人しか見つからず『申し訳ないが、予算的にだいぶ厳しい』と朝倉には伝えていました。そうしたらあいつ、どこからかわからないのですがその人を見つけてきたみたいなんです。一応朝倉には、講師の委託契約にあたって大きなリスクがないか確認してくれと頼みましたが、このインドでどのようにリスクを確認できるのか、そもそも無理な注文ですね」
 伊達は表情を緩め「お前もインドっぽくなってきたな」と言うと、話をつづけた。
 「端的に言うと、

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