東京証券取引所はグロース上場企業の上場維持基準を見直し、現行の「上場10年経過後時価総額40億円以上」から「上場5年経過後時価総額100億円以上」へと厳格化する方針だ。これにより、機関投資家の投資対象となる企業規模への早期成長を促し、達成が難しい企業にはM&Aや事業再編、あるいは再創業といった選択肢を促し、市場全体のダイナミズムを生み出すことを期待している。「グロースをグロースらしくする」取り組みとはどのようなものか。
グロースをグロースらしくする ―― グロース市場改革を実施することになった背景を教えてください。
「2022年4月に市場区分の見直しが行われ、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場という3つの独立したマーケットが新設されました。それまでは、マザーズは市場一部へのステップアップを視野に入れた市場と位置付けられ、実際に毎年数十社がマザーズから市場一部に市場変更していましたが、新たなマーケットでは、それぞれの市場区分のキャラクターを明確にし、独立性を持たせる設計にしたのです。各マーケットが個性を発揮できるようにし、それぞれの市場で企業がどのように
企業価値を高めていけるかという観点から見直しを進めてきました。
2023年3月からは、プライムおよびスタンダード市場の企業に対して『資本コストや株価を意識した経営』を推進しています。要請から2年が経過し、着実に前進してきていると感じます。
■池田 直隆(いけだ・なおたか)
東京証券取引所 上場部企画グループ統括課長。2005年4月東京証券取引所入社。入社後、上場審査部を経て、2010年6月より現職。市場区分の見直し、コーポレート・ガバナンスの充実に向けた検討、スタートアップ育成に係る制度整備など、東京証券取引所における上場制度全般に係るルールメイク等を担当。