2023年3月、KKRは特別目的会社HTSKおよびHTSKの
完全親会社で持株会社であるHTSKホールディングスを通じて約6700億円で日立物流を買収した。日立物流株の39.91%を握っていた日立製作所はHTSKホールディングスの議決権付株式10%を保有、残りの議決権付株式90%をKKRが握り、戦略的パートナーシップを組んで協業していくことになった。これに伴って、4月1日、日立物流は「ロジスティード」に社名変更して新たなスタートを切った。ロジスティード(LOGISTEED)はLOGISTICSとExceed(超える)、Proceed(進む)、Succeed(成功する)を組み合わせた上で、Speed(スピード)を持って実⾏することを表現した日立物流のビジネスコンセプト。
旧日立物流は日立製作所の物流子会社として1950年に創業。近年は3PL(サード・パーティ・ロジスティクス:物流一括受託)事業を伸ばしてきた。3PLというのは、顧客の荷物の配送・在庫管理などの業務を、プランニングやシステム構築などを含め長期間一括して請け負うアウトソーシングサービスで、SCM(サプライチェーン・マネジメント)の進展による物流の高度化等によって生まれた業態。2021年度の国内3PL売上高は前年度比4%増の4593億円と、国内3PL業界首位を誇る。
ロジスティードの2023年3月期決算は、売上高8143億1000万円(前年同期比9.5%増)、営業利益458億4000万円(18.5%増)、税引前利益399億6800万円(62.3%増)、親会社に帰属する当期利益255億1600万円(88.8%増)。セグメント別では、国内物流の売上高は4239億7200万円(2%増)、営業利益230億900万円(3%減)だった。
同社はM&Aにも積極的で、「物流子会社再構築戦略」として、企業の物流部門、物流子会社をM&Aでグループ化してきた。2005年クラリオンの物流子会社クラリオン・エム・アンド・エルを買収したのをはじめ、2007年には資生堂の物流子会社、資生堂物流サービス、2008年には東日本日立物流サービスを通じて「おかめ納豆」ブランドを展開するタカノフーズの子会社タカノ物流サービス、靴卸大手トークツの子会社だったスミダロジネットを傘下におさめ、さらに2009年には内田洋行の子会社オリエント・ロジを買収。2011年にはインキ最大手DICの子会社DICロジテック、DCMホールディングスの孫会社ダイレックス、旧日産自動車系のバンテックを買収。2013年には日立電線の子会社日立電線ロジテックなど積極的な買収を実行してきた。また、海外でも2010年にインドのフライジャック・ロジスティクス、2013年には米国のジェームズJ・ボイル、トルコのマース・ロジスティクスなどを買収。現在、国内334拠点、海外では27の国/地域で474拠点を展開している。
同社は、長期的に目指す姿として『LOGISTEED2030』を打ち出している。2030年の目標として売上高1.5兆円、CO2(二酸化炭素)排出量(13年度比)50%削減、海外売上比率50%以上を掲げており、経営陣は引き続き中谷康夫会長(CEO=最高経営責任者)、髙木宏明社長(COO=最高執行責任者)の2トップを中心に行われる。
将来の再上場を目指すといわれるロジスティードの成長戦略を、KKRの幹部はどう描いているのか。
KKRが選ばれた理由
―― 日立物流は、KKRが議決権の90%を、日立製作所が10%を保有する形で、2023年4月1日に社名を「ロジスティード」に変更して新たなスタートを切りました。本件の買収経緯についてお聞かせください。