1.新型コロナウイルスの感染拡大による化粧品業界への影響
2020年12月23日のマール記事「
藤原裕之の金融・経済レポート」で、コロナ禍によるマスク着用の常態化や在宅勤務の定着、インバウンド需要の激減により、メイクアップ化粧品の出荷額が半減しているとレポートがあった。確かに、資生堂の2020年12月期決算短信では、コロナ禍による「企業収益や雇用情勢の悪化等による消費マインドの低下」、「グローバルで経済活動の停滞(小売店の臨時休業や時短営業、海外でのロックダウン)」が原因で売上が大幅に減少したとの発表がされていた。また、ポーラ・オルビスホールディングスの2020年12月期決算補足資料でもコロナ禍によるメイクアップ化粧品の売上減について「百貨店でのタッチアップ(注1)制限による販売数減」という記載もあった。海外に製造拠点を持つ化粧品会社は、生産・物流の遅延も売上に響いていることだろう。コロナ禍以外の外的環境でも、2019年 9 月の消費税増税前の駆け込み需要の反動がネガティブな要因として働いているようだ(資生堂2020年12月期 第3四半期決算短信より)。
以下のグラフは大手化粧品会社4社の過去5年間営業利益の推移を示す。各社とも2019年まで、インバウンド需要を追い風に右肩上がりで成長してきたが、2020年は全社大幅に落ち込んでいる。
自分の身近な生活周りをみても、筆者自身、ここ1年で口紅やファンデーションを塗る回数はかなり減ったし、最近は化粧品をほとんど買っていないと言う知人は多い。ドラッグストアに行っても、コロナウイルス感染対策で化粧品のテスターコーナーは全てカバーが被せられている。
このような逆風の中、化粧品大手の各社別のM&A実績を踏まえた上で、今後の業界の動向を探ってみたい。
2.大手化粧品会社のM&A実績
化粧品売上シェア上位4社の、2000年からの主なM&A実績と動向について、それぞれ紹介したい。
(1)資生堂