苦境に立たされる資生堂
~ 13年3月期以来の最終赤字 新型コロナウイルスの拡大で大きな影響を受けているのが飲食・宿泊サービス業界だが、同様に厳しい状況に追い込まれているのが化粧品業界である。
マスク着用が日常化し、テレワークの浸透で通勤メイクの必要もなくなるなど、化粧品に対する需要は急減している。通勤メイクから解放されて楽になったとの声も聞こえてくるが、化粧品業界からすれば悪魔の声のように聞こえるだろう。
インバウンド需要を追い風にこれまで順調に売り上げを伸ばしてきた資生堂も苦境に立たされている。同社の2020年12月期の売上高は9,150億円(前年1兆1,300億円)に急減、連結最終損益は300億円の赤字となる見込みだ(図表1)。最終赤字となるのは13年3月期以来である。
図表1 資生堂の業績
~ 化粧品業界はオワコンなのか
コロナ禍はそう簡単に収束しそうにない。人々のマスク姿が定着化し、口紅やファンデーションは必要なくなる。アフターコロナの化粧品市場は以前の状態に戻らないかもしれない。だとすれば化粧品業界はこのままオワコン化してしまうのだろうか。それともコロナ禍を経て「美」が再定義され、それに沿った新たな商品・サービスが生まれてくるのだろうか。
この疑問に答えることはそう簡単ではない。しかし長年「美」を追求し続けてきた資生堂がコロナ禍で何を考えどのように行動するのか。その姿を追うことで糸口がみつかるかもしれない。
コロナ禍の化粧品市場
~ メイクアップ化粧品は半減
まずは資生堂を取り巻く経営環境がコロナ禍でどれだけ変化したのか、統計データから確認しておこう。
生産動態統計で化粧品の販売金額(出荷ベース)の変化率をみると、中国を中心とするインバウンド顧客の急減を受けて年初から前年割れとなった。4月と5月は緊急事態宣言に伴う営業自粛の影響で約3割の減少。その後少しずつ減少幅は縮小するものの、直近10月時点では依然として前年割れ状態にある(図表2)。…
■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社、一般社団法人日本リサーチ総合研究所を経て、2020年4月より合同会社センスクリエイト総合研究所代表。株式会社東京商工リサーチ客員研究員を兼任。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。
ブログサイト「
藤原裕之のブログ アートとサイエンスの「あいだ」」を運営。