[【人事】「M&A人事の新常識」~グローバルの年金・ベネフィット最新事情(マーサー ジャパン)]

(2021/08/31)

【第2回】報酬は金銭+非金銭

ベネフィット制度の特質を理解し、人事施策の費用対効果を高める

北野 信太郎(マーサー ジャパン グローバルクライアントマネージャー シニアプリンシパル)
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 クロスボーダーM&Aの際、ターゲット企業の非金銭報酬制度について考える機会も多い。ものの本などでは「Employee Benefit」制度、略してベネフィット制度を「福利厚生」制度と翻訳されているが、どうも今一つの訳だからだろうか?日本の担当者のベネフィット制度に対する認識が海外に比べて低いように思われる。今回は、海外の雇用におけるベネフィット制度の位置付けについて、日本のそれと対比しながら整理し考察してみたい。

 なお、本稿では特に表記のない限り、法定外の福利厚生制度を指して、単に福利厚生制度と呼ぶことにする。

1. ベネフィット制度=福利厚生制度?

 まず、福利厚生制度とは何だろうか?一般に、日本の福利厚生制度とは以下の目的があるといわれている。

  • 従業員の生活を安定させること
  • 安心して働ける労働条件・環境を整えること
  • 従業員やその家族の福祉を向上させること

 福利厚生制度とは、いわゆる金銭報酬とは別に従業員やその家族の生活の質を向上するためのさまざまな非金銭報酬を指す、と解釈できる。これら制度を提供する目的は、言うまでもなく優秀な人材の獲得と引き留めのためだ。代表的な制度に、住宅補助や保養所等のレクリエーション関連、通勤補助や介護・育児支援などが挙げられる。

 一方、ベネフィット制度についても正確な定義があるわけではないが、一般に給与等の金銭報酬に上乗せとして提供される、非金銭報酬を指すとされる。ここで、上記の福利厚生制度との違いに気付かれただろうか?

■ マーサー ジャパン

■ 筆者略歴

北野 信太郎(きたの・しんたろう)

グローバルクライアントマネージャー シニアプリンシパル 英国アクチュアリー会正会員

マーサーのプリンシパルで、グローバル・クライアント・マネジャーとして日系グローバル企業の海外拠点の人事・福利厚生制度のガバナンス体制構築並びに運営を主に支援。日本におけるマルチナショナルクライアントセグメントのHealth/Wealth領域のリーダーを兼任。
現職以前はマーサーの年金コンサルティング部門の代表を務める。年金コンサルティング部門では、日系グローバル企業に対する海外の年金制度のコンサルティング・サービスを創設し、欧米での年金バイアウトやクロスボーダーの年金デューデリジェンス、米国401kの被差別テストや制度統合、グローバルアクチュアリー等のサービスを立ち上げる。その他、国内でも制度設計や企業合併・買収等の支援、労使交渉支援等、幅広くプロジェクトを担当する。社外での講演や専門誌等への寄稿等も多数行う。
マーサー入社以前は、英国ワトソンワイアット(現ウィリスタワーズワトソン)で年金数理コンサルティングの業務に携わる。
ロンドン大学インペリアル・カレッジ大学院で数学の修士号を取得し、英国アクチュアリー会の正会員である。

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