[M&Aトピックス]

(2024/10/23)

第18回M&Aフォーラム賞が決定―M&Aフォーラム賞『RECOF賞』などに4作品を選定

人材育成と優れた作品の表彰を通じ、わが国M&Aの発展に貢献

落合 誠一 氏
 また、M&Aフォーラムの落合誠一会長(東京大学名誉教授)は、同フォーラムの活動について次のように述べた。

「私ども『M&Aフォーラム』の設立経緯を振り返りますと、内閣府経済社会総合研究所にM&A研究会が置かれ、私もそのメンバーとして参加し、わが国のM&Aの発展について議論がなされました。この結果、2005年にM&Aフォーラムの設立が提唱され民間ベースのフォーラムとして発足した訳ですが、その過程で、M&Aフォーラムの事業の柱となる2つの重要な点が挙げられました。

 1つはM&Aに精通した人材の育成であります。基本的な部分と応用的な部分の大きく2つに分けて、それぞれに応じて人材養成プログラムを進める形で生み出されたのが『M&A人材育成塾』です。M&Aを学べる研修・セミナーを開催し、これまでにご活用いただいた企業数は延べ1,400社を超え、受講された方は延べ約2,000名に達しております。当フォーラムは、人材育成を通じてわが国のM&Aの発展に微力ながらも貢献してきたものと自負しております。

 もう一つは、M&Aに対する研究を発展させていくことの必要性です。この考えに基づいて開催されておりますのが『M&Aフォーラム賞』です。わが国のM&Aの普及啓発に資する優れた書籍、研究論文に対して表彰する制度であり、毎年実施して参りましたが、月日の経つのは早いもので18回目を迎えました。また、これまでに66作品の書籍・研究論文が顕彰され、M&Aの研究者の方々の間でも相当に浸透している賞ではないかと思っております。

 受賞作品の選定においては、甲乙つけがたい優れた応募作品が多い中、岩田一政選考委員長の下、選考委員会において、厳正なる審査が行われております。岩田委員長を始め、審査の労を賜りました選考委員の先生方に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 なお、M&Aフォーラムが設立された当時と比較しますと、日本でも随分M&Aが普及し、企業経営の有力な手段になっております。日本のM&Aがますます発展し、ひいては日本の経済・産業全般にプラスの影響を与えることを望んでおります」

受賞者の言葉

 受賞者は、それぞれ次のように喜びの言葉を述べた。
【受賞者の言葉】

■ M&Aフォーラム賞正賞『RECOF賞』
 太田 洋 氏(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 パートナー弁護士) 
太田 洋 氏
「この度は大変栄誉ある賞を賜り、誠に光栄に存じます。選考委員の先生方はじめご関係の皆様、版元の岩波書店様に厚く御礼申し上げます。今まで奨励賞は3回受賞させて頂いているのですが、正賞の受賞は初めてで、喜びも一入です。

 本書は、一般のビジネスパーソン向けに敵対的買収(同意なき買収)とアクティビストの実相を分かり易く解説するための書籍として、新書形式で執筆致しました。

 「企業買収における行動指針」などの影響もあり、同意なき買収やアクティビスト対応を巡る議論と実務は今後飛躍的に発展を遂げることが予想されるところです。本書がそのような実務の発展の一助となれば誠に幸いです 」

■ M&Aフォーラム賞奨励賞『RECOF奨励賞』 
 渡井 理佳子 氏(慶應義塾大学大学院法務研究科 教授・行政法)
渡井 理佳子 氏
「第18回M&Aフォーラム賞奨励賞 『RECOF奨励賞』 を賜りまして、誠に有り難うございました。選考委員会の先生方、そして株式会社レコフデータ様に厚く御礼を申し上げます。

 安全保障の見地からの対内直接投資規制は、研究を始めた30年ほど前の時点では、資本移動の自由の例外にとどまっておりました。しかし、経済安全保障の高まりと共に、今日では規制の本流ともいうべき役割を果たすようになってきております。本書は、アメリカと日本の比較を通じ、対内直接投資規制の今後についての検討を試みたものです。

 この度の受賞を励みとして、これからもM&Aをめぐる法制としての対内直接投資規制をテーマに研究を続けて参ります。どうぞ御指導のほどよろしくお願い申し上げます」

■ M&Aフォーラム賞奨励賞『RECOF奨励賞』
 澤野 亮太 氏(東京大学大学院 工学系研究科技術経営戦略学専攻 修士課程2年 / デロイトトーマツコンサルティング合同会社M&Aユニット)
澤野 亮太 氏
「本作は、企業間の戦略的提携に焦点を当て、製品特性の違いによって、その望ましい提携の在り方が異なることを示唆した論文です。業界や製品のモジュラー化が進行するとき、幅広い提携関係を有する企業と提携すること、また結合度の高い提携形態をとらないことが企業パフォーマンスにとって好ましいことを、M&A取引データを用いて実証しました。M&Aの実務経験から着想したテーマを、修士課程での学修・研究で発展させ論文にした本作がM&Aフォーラム賞奨励賞を受賞したことは、その過程にて様々な方法で支えて下さった諸先輩方のお陰であり、感謝の念に尽きません。

 今回の受賞を終点とせず、更なるM&A研究の発展と、成果あるM&Aの実現の双方に貢献できるよう、弛まぬ努力を続けていきたいと思います」

■ M&Aフォーラム賞選考委員会特別賞 『RECOF特別賞』
 松崎 優一 氏(東京大学経済学部金融学科4年)
松崎 優一 氏
「この度は、大変栄誉ある賞を賜り、誠に光栄に存じます。選考委員の皆様、レコフデータ様、そして東京大学首藤ゼミで本論文を執筆するにあたりご指導いただいた首藤先生をはじめ、お世話になった皆様に心より御礼申し上げます。

 本論文では、会計処理の保守性が日本のM&Aにおいてどのような影響を及ぼしているかを分析しました。会計学では、主に減損等の損失を早期に計上する会計処理が保守的と定義されます。分析の結果、保守的な会計処理を行う企業は、不採算事業資産を抱えているリスクが低いため、買収の対象となりやすく、高いプレミアムで評価されることが示されました。

 本研究を通じて得た知見を実務の中で活かせるよう精進してまいります」

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