[M&A戦略と法務]

2024年11月号 361号

(2024/10/09)

私的整理手続におけるM&A契約のポイント

~第二会社方式を利用した事業の承継~

近藤 翔太(TMI総合法律事務所 弁護士)
  • A,B,C,EXコース
第1 はじめに

 事業再生の手法は様々あるが、民事再生会社更生といった法的手続を利用する法的整理と、法的手続を利用しない私的整理に大きく分けられる。さらに私的整理は、事業再生実務家協会中小企業活性化協議会などの中立・公正な第三者機関の関与のもと進められる準則型私的整理と、そのような第三者機関の関与がないまま進められる純粋私的整理に分けることができる。

 法的整理と私的整理の相違点を挙げると、法的整理の場合、基本的には全ての債権者が手続に巻き込まれ、それぞれの有する債権が権利変更の対象となるのに対して、私的整理では、通常、金融債権者のみを対象として進められ、商取引に関係する債権が手続の対象外におかれるため、権利変更の対象にはならない。そのため、私的整理の場合、手続の期間中や手続後も、債務者は、商取引を継続して、信用状態を維持することができ、法的整理に比べて、事業価値を毀損するリスクが少ないと考えられている。

 他方で、私的整理の場合、債権の権利変更等を定めた事業再生計画を成立させるには、対象となる金融債権者全員の同意を得ることが求められるため、計画成立に不合理に異議を唱える債権者が1社でもいると、計画どおりの権利変更等が実行できない危険性がある。そのため、法定の可決要件を充足して、裁判所の認可というお墨付きが得られれば、反対する一部の債権者がいても、再生計画に基づいた権利変更等を強いることができる法的整理と比べたとき、私的整理では債務者としては、債権者との間でより粘り強い交渉や協議が求められることとなる。

 また近時の事業再生にあたり、


■筆者プロフィール■

近藤氏

近藤 翔太(こんどう・しょうた)
TMI総合法律事務所弁護士。事業再生・倒産、M&A分野に主に従事している。事業再生・倒産分野は債務者、スポンサー、担保権者を含む債権者等様々な立場の当事者を代理し、法的整理・私的整理を問わず各種案件を担当。また、事業会社、PEファンド等を代理して、平時のM&A案件にも多数関与従事。地方公共団体による第三セクターの売却など特殊なM&A案件も取り扱っている。全国倒産処理弁護士ネットワーク会員。

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