[企業変革手段としてのM&Aの新潮流 Season2]

2022年9月号 335号

(2022/08/09)

第3回 デジタルショーケース/デジタルキャプチャによるDXの実現

堀 佳介(デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 パートナー)
植田 敦(デロイト トーマツ コンサルティング マネジャー)
松友 孝如(デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャー)
小山 千草(デロイト トーマツ コンサルティング マネジャー)
中嶋 勝敬(デロイト トーマツ コンサルティング シニアコンサルタント)
  • A,B,C,EXコース
1. 自社リソースのみでDXを推進する場合の課題

 「当社はDXがなかなか進まない」と悩まれている経営者は多い。その理由は様々だが、我々が実際のDXコンサルティングを通して経験してきた事例によれば、主な原因として以下の4つの事象が考えられる。
(1)DX自体が目的化している
DXで成し遂げたいゴールが、合理的・定量的で、かつ魅力的な目標として定められていないため、目標を設定してもそこに向かって推進する力が働きづらい。
(2)設定しているゴールが自社単独では達成できないものになっており、かつ、達成に向けて他社を巻き込む働きかけができていない
設定したゴールが企業のバリューチェーンにおける他の取引先(サプライヤー)を巻き込む必要がある場合、彼らにとっての意義を説きコミットメントを得なくてはならないが、その働きかけを怠っているため、DXのはずが特定業務のデジタル化(電子化)で終わってしまう。
(3)DXを推進する体制が人材面・制度面で整っていない
一般的に、社内に適切なデジタル人材が存在しない場合、IT部門の一部にDX推進機能を担わせるケースがある。しかし、単純にIT部門にDX推進の役割を与えただけでは、従来の業務プロセスからの脱却は難しい。また、こうした企業では経営側の承認プロセスも旧来のバッチ型で迅速性に欠ける事が多く、仮に現場がアジャイル型のアプローチによる業務プロセスを取り入れたとしても、経営からの承認待ちがボトルネックとなってしまい、かえってDX推進の複雑性が増してしまう。
(4)現在のオペレーションに組織・人材・システムなどが最適化されてしまっており、社員がその変革に後ろ向きになっている
社員自身が「今のやり方がベストだとは思わない」と感じていながら、DXに踏み切る提案が出るとその課題や問題点ばかりに目が行ってしまい、実行が頓挫してしまう。
 以上に挙げた4つの事象に共通する課題は、自社の現状に対する強い問題意識とDXに向けたやる気はあるものの、その実現に向けた計画を練り始めたところで、できない理由を挙げ始めてしまう点にある。特にこうした傾向は既存の組織やプロセスのしがらみが大きい場合に顕著に表れる。

 このような自社リソースのみでDXを推進する事に限界を感じる企業の多くが、ケイパビリティを外部から獲得するためにM&Aを志向する。それでは、DXの実現を目的としたM&Aでは具体的にどのような手法が効果的だろうか。

2. デジタルショーケース/デジタルキャプチャとは何か

 DXに必要なケイパビリティを外部から獲得するためのM&A手法として、ここでは2つのアプローチをご紹介したい。

 ひとつはM&Aによりデジタルケイパビリティを獲得する「デジタルショーケース」という手法である。

 一般的に新たなDX施策に取り組む場合、自社の従来の成功パターンや蓄積ノウハウをそのまま活用する事が難しく、不確実性が高い場合が多い。そのためにまずは施策の実現可能性を検証するPoC(Proof of Concept)を行うのだが、そもそもDX施策を実現する社内制度や人員体制が整っていないため、PoCを実施するにしても社内稟議・予算確保・環境整備などで時間と手間がかかってしまう。成果が不確実な上に実証にも多大な工数がかかる事から、DX推進の機運が低下し、結果としてPoC倒れに終わってしまうケースも多く散見される。

 デジタルショーケースは、

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