[Webインタビュー]

(2021/09/14)

【第130回】【ティーキャピタルパートナーズ】日本マイクロバイオファーマの成長戦略を語る

――メルシャンで培った微生物発酵技術を活かしてニューモダリティ分野での成長を目指す

大佐古 佳洋(ティーキャピタルパートナーズ ディレクター)
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メルシャンの医薬品・化成品事業からスタート

―― 日本マイクロバイオファーマ(MBJ)は、1941年昭和農産化工(現メルシャン)八代工場で、発酵法によるアセトン・ブタノールの製造を開始したという歴史を持っています。その後三井物産の100%出資のもと、2011年にメルシャンの医薬・化学品事業部門を会社分割によって承継して「日本マイクロバイオファーマ株式会社」として新たなスタートを切り、2012年には東レが資本参加(全株式の20%)しました。2021年7月、ティーキャピタルパートナーズ(以下Tキャピタル)はMBJの全株式を取得されましたが、今回のM&Aの経緯についてお聞かせください。

「もともと弊社は、プライベートエクイティ業界の中では日本で最初に国連の責任投資原則を採択するなど、持続可能性あるより良い社会の構築に貢献したいという観点で、ヘルスケア業界への投資に注目していたところに、MBJの大株主である三井物産と東レが、ポートフォリオの見直しでMBJの持株を手放すというお話があって、2020年夏ごろから検討を開始しました。

 MBJは、おっしゃるように前身のメルシャンの医薬・化学品事業からスタートして50年以上にわたり、微生物発酵や微生物変換法といった技術を活かして、抗がん剤をはじめとする医薬品原薬や食品・飼料・農業用原体などの製造を展開しています。MBJは微生物発酵技術という極めてユニークな特長を持っており、将来的に医薬品業界で必要不可欠な存在として成長が期待できると確信して投資を決めました。また、弊社は過去に塩野義製薬の傘下で、医薬品の開発製造受託機関(CDMO)としては国内専業最大手の武州製薬に投資した経験もあり、MBJの更なる成長に我々が貢献できると考えたことも投資を決定した大きな理由です」

微生物発酵の技術を持ったCDMOとしてユニークなポジション

―― MBJのビジネスモデルの特徴について詳しくお聞かせください。

「MBJはメルシャンの医薬・化学品事業が源流で、現在は自社の医薬品原薬・非医薬品事業、医薬品原薬のCDMO事業と幅広い領域で事業を展開していますが、その中核には微生物発酵技術というコア・テクノロジーがあります。

現在の主力事業は医薬品原薬のCDMO事業なので、これを例にMBJの特長をご説明すると、一般的に低分子医薬品の原薬製造は化学合成で行われますが、目的化合物の特性によっては化学合成だと非常に手間がかかる場合もあります。それに対するソリューションとして、微生物発酵や微生物変換技術で医薬品原薬を合成できることがMBJのユニークな点です。例えば、MBJはP450と呼ばれる水酸化酵素のライブラリーを自社で構築・保有していますが、これを医薬品原薬の製造に応用することで、一般的な化学合成では20ステップかかる工程が1ステップに短縮できた例もあります。この例のように、合成プロセスの圧倒的な効率化によって、製造コストを大幅に低減できる点が微生物変換技術の大きなメリットです。…

■おおさこ・よしひろ
九州大学法学部を卒業して住友商事に入社し、事業投資業務などに従事。2006年9月より東京海上キャピタル(現ティーキャピタルパートナーズ)に参画し、三起商行、武州製薬への投資及び経営に関与した他、ヘルスケア、アパレル企業等、幅広い業種の投資検討に従事。2013年同社退職後、あきんどスシロー、武州製薬などの事業会社で経営企画、M&A、PMI業務等に従事。その後、2018年11月よりティーキャピタルパートナーズ復帰、ディレクターに就任。

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