報道などによると、2019年年間で親会社が上場する上場企業数(いわゆる親子上場の数)は15社減少(12月20日時点)して288社となり、ここ数年で親子上場が最も急速に減少した。親子上場企業数が2000年代初めには350-400社程度あったことを考えると、相当整理が進んだような印象を受ける。
もともと親子上場に対しては子会社の既存株主と支配株主としての親会社間の利害衝突(子会社による資金調達で親会社が事業を拡大したり、親会社の事業戦略の変更などに追随せざるを得ないケースなど)の可能性を懸念する声がある。本業以外に事業を多角化することによって、企業グループ全体の企業価値が毀損してしまうことは「コングロマリットディスカウント」として知られるが、親子上場も一般株主の利益に必ずしもつながらない場合があり、こうしたディスカウントが問題視されることもある。最近ではコーポレートガバナンスの観点から、経済産業省が主導する議論をもとに「グループ・ガバナンス・システムに関する実務方針」が策定され、上場子会社に対するガバナンスのあり方が注目されている。親子上場企業数の減少という最近のトレンドから判断すると、グループ企業全体の価値を引き上げるためには、(上場子会社の完全子会社化や売却によって)支配株主と一般株主間の利害衝突を回避することが望ましいとの見方が次第に増えているように思われる。
その中で昨年秋以降注目されていたのが、総合化学大手である三菱ケミカルホールディングス(三菱ケミHD)の事業再編の動きである。同社は上場子会社として傘下に田辺三菱製薬(持株比率56.4%)、大陽日酸(同50.57%)を保有していたが、19年11月、田辺三菱製薬を完全子会社化すると発表した。それまで市場では同社が他社に売却される可能性が高いとみられていた。田辺三菱製薬..