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[M&A戦略と会計・税務・財務]

2017年11月号 277号

(2017/10/17)

第125回 買収か資本参加か:海外子会社・投資先のコントロールはどうあるべきか

 山内 利夫(PwCアドバイザリー合同会社 ストラテジスト)

【はじめに】

  買収した海外企業や成長に伴って力をつけてきた新興国での合弁相手をどのようにコントロール(管理、統制、支配)するか―海外で合弁事業営み、現地企業を買収した企業にとって「コントロール」は大なり小なり課題となる。日系企業の方々からも、被買収会社を含む海外子会社や合弁相手のコントロールに苦労しているとのお話を耳にする(2014年8月号マール対談「日系企業が新興国M&Aで成功するためにおよび関連研究をご参照頂きたい)。

  その対応策を検討した結果、コントロールを強化するためにマジョリティをとり、完全子会社化することを選択する企業もあれば、コントロール強化を諦め、現状維持または売却、合弁解消を選択する企業もある。極端な例ではあるが、コントロールしない、シナジーも求めない、投資先にレポーティングと利益追求のみ求めるという結論に至っている企業もある。

  現地企業のコントロールについてもう一歩踏み込むと、日系企業の本社が直接ないし現地企業を通じて現地の親密取引先(サプライヤーおよび顧客)や取引銀行のコントロールができているかという視点もある。こちらは「コントロール」というよりは「マネジメント」というべきかもしれないが、日本で活動する欧米企業を対象とした研究では、日本市場で成功している欧米企業は合弁方式を好み、合弁相手である日本企業のもつ取引先・取引銀行ネットワークを活用していることが分かっている(境2003)。

  本稿では、本社が海外子会社を「コントロール」する5つの手段を整理し、その1つである「経営権」を中心にM&Aの目的や制約条件に応じてどのようなアプローチをとるべきかについて述べる。

1.コントロールの手段

  企業の規模が拡大し、進出地域が広がれば広がるほど、企業はコントロール(管理、統制、支配)の在り方を検討する必要性が高まる。浅川(2003)は、多国籍企業においては、外部環境の多様性ゆえに、組織としての一貫性を保つための統合メカニズムとしてのコントロールが重要であるとする。

  一般に、「多国籍企業(Multi-National Company: MNC)」は数十カ国・地域に展開する企業を想定している。先行研究ではMNCと言えば欧米系企業である。しかし、日系企業も進出国・地域を多様化させており、MNC化が進んでいる。その結果として、欧米系MNCと同様にコントロールが経営課題として上がってくる。

  では、コントロールの手段にはどのようなものがあるか。このテーマは多くの経営学者が関心を寄せてきた。浅川によれば、大きく分けると、「公式メカニズム(ルールやマニュアルによるルーティン化、標準化、形式化)」と「非公式メカニズム(人的ネットワークや、理念・価値観の共有といった文化的メカニズムの活用)」の2つがあり、流れとしては公式メカニズムから非公式メカニズムの重要性が着目されつつある。

  近年、 Child(1972, 1973)は、コントロールシステムには「人的なもの(personal)」と「官僚的(bureaucratic)」なものがあるとした。Edström & Galbraith(1977)は人の交流を通じて理念・価値観を共有して影響を与え合う「社会化によるコントロール(control by socialization)」を提唱した。Baliga & Jaegar(1984)は、コントロールには「官僚的コントロール(bureaucratic control)」と「文化的コントロール(cultural control)」があり、社員の行動は企業マニュアルと経営陣の哲学によりコントロールされ、行動の成果は業績レポートと業績に関する価値観によってコントロールされるとした。

  上記の議論と日系企業へのインタビューを踏まえ、清水・三橋・永妻・山内(2014)は、日系企業が採用しているコントロールの手段として以下の5つを提示した(図表1)。

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