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[M&A戦略と法務]

2019年7月号 297号

(2019/06/17)

欧米のプライベート・ディールに関するM&A契約の特徴

‐欧米の統計データを踏まえて‐

永田 幸洋(TMI総合法律事務所 パートナー弁護士)
1. はじめに

 2018年1月から12月の日本企業のM&A件数は3850件と、2017年の3050件から26.2%増加し、過去最多を更新しているとともに、日本企業による海外M&AであるIN-OUT案件も777件と前年比15.6%増加し、2014年以来、5年連続で最多を更新するなど、日本企業によるM&Aは引続き活発に行われている(注1)。

 海外M&Aに関する契約には、日本におけるM&A契約とは異なる内容が定められることがあり、米国、欧州等各地域によってもそれぞれ特徴がある。日本の実務への影響も強い米国のM&A契約の特徴を把握しておくことは勿論重要であるが、日本のM&A契約が基本的には米国の影響を受けたものであることから、日本企業にとってより馴染みの薄い欧州のM&A契約の特徴について把握しておくことも重要である。

 そこで、本稿では、買主を日本企業、欧米の非公開会社を対象会社とする株式譲渡案件(プライベート・ディール)を念頭に置き、欧米のM&A契約についての主な特徴を把握するという観点から、米国における契約と欧州における契約の主な特徴について、日本の契約と適宜比較をしながら、統計データも踏まえつつ説明を行うこととしたい。


2. 欧米のM&A契約の特徴

(1) 譲渡価額

ア.クロージング・アカウント方式/ロックド・ボックス方式

 日本のM&A取引においては、譲渡価格が、一定の評価基準日以降クロージングまでの事情に基づき調整される場合には、いわゆるクロージング・アカウント方式が採用され、評価基準日における対象会社の運転資本等の財務数値とクロージング時点における対象会社の運転資本等の財務数値との差額を計算し、当該差額を踏まえた価格調整が行われている。他方で、価格調整を行わない場合には、確定した譲渡価格を株式譲渡契約において規定することが通常である。

 また、米国においても、クロージング・アカウント方式による譲渡価格の調整が行われることが多く、2016年及び2017年前期を対象とした米国法曹協会の米国に関する統計資料(注2)(以下「本米国統計資料」という。)によれば、86%の事例においてクロージング後の価格調整が定められている(注3)。

 もっとも、英国等の欧州では、ロックド・ボックス方式という方式が採用されるケースが増えており、欧州以外の地域にも広がりを見せつつある。2014年から2016年を対象とした米国法曹協会の欧州に関する統計資料(注4)(以下「本欧州統計資料」という。)によれば、欧州では60%の事例においてロックド・ボックス方式が定められている(注5)。ロックド・ボックス方式とは、評価基準日における株式価値を基礎に、株式の譲渡価額を契約締結時点で確定させ、クロージング日における対象会社の財務数値を踏まえた価格調整を行わない方式である。

 クロージング・アカウント方式による場合には、クロージング後に価格調整を行う手間や当事者間において見解の相違が生じる可能性があることに対して、ロックド・ボックス方式による場合には、譲渡価格が株式譲渡契約締結時点において確定し、クロージングまでの対象会社の事業活動による価値の変動リスクを買主が負うことになるため、売主に好まれる方式といわれることが多い。

 ロックド・ボックス方式が採用された場合には、

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