[Webインタビュー]
(2019/02/14)
~ リサーチ業務でフル活用
インターネットサービス『レコフM&Aデータベース』は、日本のM&A市場、業界再編動向、企業戦略などの分析ツールとして、M&A業務に携わるプロフェッショナルの方々、研究者の方々の必須アイテムとなっています。昨今では、業界再編や海外M&Aに加え、ベンチャー投資や事業承継M&Aなど、市場が拡大するなかで営業ツールとしても活用されるなど、その活用方法が広がってきています。そこで、ご愛顧いただいている各業界のユーザーの皆さまにその活用方法などについてインタビューさせていただくことにいたしました。
第1回目は、森・濱田松本法律事務所・図書担当の中村智子様です。
―― お仕事の内容を教えてください。
「私が所属するセクションは『図書』といって、もともと事務所の蔵書管理がメインでした。データベースの管理は、判例のデータベースから始まったのですが、『図書』で導入の際の交渉や契約をしたのがきっかけで、蔵書に加えて、データベース全般の契約や管理もするようになりました。最近はデータベースの種類も増えています。蔵書やデータベースの管理ができるのなら内容を把握しているのでリサーチもできるよね、ということでリサーチ業務もやるようになりました。これに付随して今は、最新のトレンドが掲載されている本や雑誌、新聞、官公庁や各業界の動向を日々ウォッチして収集し、その関係分野の弁護士宛に情報発信をしています。さらに、若手の弁護士にはデータベースを使ったリサーチの仕方や分析の切り口を教えることもありますし、データベースをあまり使いこなせない弁護士には使い方を含めて教えるといったサポートをしています。スタッフは5人います」
―― 「レコフM&Aデータベース」導入のきっかけは何ですか。
「もともとはM&A専門月刊誌『MARR(マール)』でした。1999年から購読しています。購入を決めたのはM&Aを専門分野とする弁護士達でした。データ提供がまだ雑誌だけだった頃です。その後、CD-ROMでのデータベースサービスが始まってその時代から現在のインターネットサービスまでずっと利用していまして、そういう意味でいうと20年利用していることになります」
―― 「レコフM&Aデータベース」をどのように活用されていますか。
「弁護士が案件を受けるにあたって、依頼を受けてその業界の動向などを調べたりしますが、新聞などの記事で『レコフ調べ』の統計が掲載された時は、関連のある弁護士にお知らせするとともに、『レコフM&Aデータベース』を使って同じ統計が出せることを案内しています。そうすると、違う切り口、例えば年別でなく月別が出せるか、海外であれば地域や国別で出せるか、などの問い合せがくるので、出せますよ、というような感じで使わせていただいています。
最近では情報を収集する際の最初の手がかりとしてまずインターネットで調べることが多いですが、当所も同様で、特に若い弁護士はインターネットで検索してみて、そこでヒットしないと、他にリサーチ方法や情報はないでしょうかと相談されることがあります。その際は、M&Aに関連していると、まず、『レコフM&Aデータベース』で調べてみてはどうでしょう、と案内しています。『レコフM&Aデータベース』には案件の概要やリリースした日付が収録されているので、気になる案件をうろ覚えの記憶でまず調べてみて、ヒットしたらその日付をもとに他のデータベースを検索するといったような手がかりにすることがあります。それに、弁護士の仕事は9時-5時ではないので、私達がいない夜中でもちゃんと使えるように、特に若手の弁護士には使いこなしてもらうようにしています」
―― 利用して業務に役立つと思われる点はどんなところですか。
「たとえば、TOB実施後に株価が適正価格だったかどうかという訴訟になることがあるので、適正だったことを証明するために過去の類似案件を調べたりします。弁護士が執筆する際にも使っています。出版社から『この判決の評釈を書いてもらえませんか』と依頼があったときに、概要を知りたいとか、詳しい内容を知りたいということでも活用しています。また、弁護士がM&A法の書籍を執筆する際もこの分野のこの数字のデータが欲しいと弁護士から依頼があれば、図書スタッフの方でデータを抽出したりしています。例えば、今度、海外M&Aの実務本を書くから資料出して、といった感じです」
―― 「レコフM&Aデータベース」ならではと思われる機能などはありますか。
「案件ごとにスキームや当事者の業種、国籍など細かく分かれているので、集計して数字をエクセルでダウンロードできることと、国別でかなり詳しい情報が出せるので、その辺りが使いやすいと思っています。データを切り分けた形で出すことが多いので、加工がしやすいです」
―― 弁護士ご自身がよくご覧になっているデータは何ですか。
「敵対的M&Aや防衛策のデータ、それから別途ご提供していただいている『第三者割当データ』もキャピタルマーケットの弁護士がよく見ています。例えば株主の異動状況。誰が持っているか、誰に対して発行しているかといった情報をもとに適時開示情報を確認したりして、弁護士が新しく手がける案件の類似データを調べてみたりしているようです。M&A情報・データサイト『MARR Online(マールオンライン)』が配信している『M&A速報』を見て、気になる案件をデータベースで確認している弁護士もいると思います」
―― M&A専門月刊誌「マール」と合わせて使われていることもありますか。
「弁護士から2月号に掲載されている1年間の全M&Aデータが見たいという問い合わせがあって、それに関連してデータを渡すことがあります。あとは、『マール』の記事編がウェブ上に掲載されているので、インターネット検索でヒットした『マール』の記事を読みたいという問い合わせが最近は多いです。当所では蔵書のデータベースができていて、そこに図書のスタッフが日々記事のタイトルなどを入力しています。弁護士は自分の興味のある雑誌を選択し、その雑誌記事がアップデートされると、それを次の日の朝、自動的に配信されるようなシステムになっています。さらに、1日1回夕方に図書のスタッフから各分野の弁護士に読んでおいた方がいいと思われるトピック的な記事などをメールでお知らせしているのですが、『マール』の記事も他のM&Aの記事と合わせてお知らせしています。そのメールを見て『読みたい』と言ってくる弁護士も多いですね」
―― 弊社のデータベースについてご要望はありますか。
「個々のM&A案件の適時開示情報や有価証券報告書といった添付書類などを全部一括して閲覧できるようになるといいと思います。弁護士は全資料を見なければいけません。それが一式揃って資料として成り立つものなので、少なくとも適時開示情報くらいは抄録が出てきた時に一緒に表示されるとか、データベース内に置いておくのが難しいようでしたら当事者企業のホームページにリンクを貼ってもらえるととてもありがたいです。
あとは株価です。『YAHOO!ファイナンス』だと今現在上場している企業の株価しかありません。発表当時の株価がほしいのに株価が出てこない、ということがよくあります。裁判の時も当時の株価がいくらだったのか、それが適正だったのか、というところを争うので、その当時のことを調べなくてはいけません。今は株価情報、新聞報道、EDINET、TDNETとデータベースが全部バラバラなので、それらの情報・資料をトータルして串刺しで検索できると利用者としてはありがたいですね。4月に『レコフM&Aデータベース』がバージョンアップされ、トップ画面もがらりと変わり、新しい機能が付いたり、アドバイザリー情報などのコンテンツが増えたりするそうですね。その機会に内容を再確認し、使い方を社内レクチャーしようかと考えています」
―― 本日は、ありがとうございました。
(聞き手 長谷川雄紀)
[Webマール]