[M&A戦略と会計・税務・財務]

2025年1月号 363号

(2024/12/10)

第208回 総合経済対策と企業活動への影響

荒井 優美子(PwC税理士法人 タックス・ディレクター)
  • A,B,C,EXコース
1. 3党合意による経済対策

 2024年11月22日、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」(以下、「令和7年総合経済対策」)が閣議決定された。令和7年総合経済対策は、自民・公明・国民民主3党により合意された総合経済対策であり、第214回国会における総理大臣所信表明演説(10月4日)で示された経済政策(①物価上昇を上回る賃金上昇の定着、②GX(グリーン・トランスフォーメーション)の取組の加速、③イノベーションとスタートアップ支援、④地方創生のための「新しい地方経済・生活環境創生本部」の創設)に、国民民主党の政策である「減税」、「社会保険料の軽減」、「生活費の引き下げ」等のうち、基礎控除、給与所得控除の拡大(現行は103万円)やガソリン減税等の措置が加えられたものである。

 令和6年度税制改正により実施された、所得税・住民税の定額減税による税収減は、所得税2.3兆円、住民税0.9兆円と試算されたが、令和7年度税制改正において基礎控除、給与所得控除の拡大が、所得税と住民税で行われる場合は、税収減は7兆円から8兆円にまで達すると試算されており、制度設計と代替財源の検討が課題とされている。本稿では、令和7年総合経済対策の概要と企業活動への影響を解説する。

2. 令和7年総合経済対策の概要

 令和7年総合経済対策の閣議決定の日に、石破内閣総理大臣(以下、「石破総理」)は記者会見の場で、「コストカット型の経済」から脱却し、「高付加価値創出型の経済」への移行と、これを目指すことを経済対策の主眼とするとし、2030年度までにAI(人工知能)あるいは半導体の分野に10兆円以上の公的支援を行い、10年間で50兆円超の官民投資を引き出すことを明らかにした。



■筆者プロフィール■

荒井 優美子荒井 優美子(あらい・ゆみこ)公認会計士/税理士
コンサルティング会社、監査法人勤務後、米国留学を経てクーパース&ライブランド(現PwC税理士法人)に入所し現在に至る。クロスボーダーの投資案件、組織再編等の分野で税務コンサルティングに従事。2011年よりノレッジセンター業務を行う。日本公認会計士協会 租税調査会(出版部会)、法人税部会委員。一橋大学法学部卒業、コロンビア大学国際公共政策大学院卒業(MIA)、ニューヨーク大学ロースクール卒業(LLM)。

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