- <目次>
- 自己紹介
- PMIの計画準備~チーム編成、外部プロフェッショナルの使い方
- 一番の要は骨太な戦略仮説~DDの3つの目的
- 計画ギャップを回避するためにどう対応するか
- シナジーは買収のバリュエーションの計画には入れない
- 買い手側と売り手側の意識のギャップ
- KPIの設定とモニタリング
- ビジョンの合意形成プロセス
- 日本から派遣する人材の質
- デジタルM&AのPMIについて
- 全てのディールはユニークである
自己紹介
―― グローバルM&A戦略で、買収後の
PMIを円滑に実⾏スタートさせるためにはDAY1までに買収側としてPMI計画の準備は出来上がっている必要があると言われます。しかし、実際にはPMIにおける計画とのギャップをどのように埋めていたらいいのかという問題に悩んでいる企業が少なくありません。また、本社のチーム編成、外部プロフェッショナルの使い方、本社と買収先企業とのコミュニケーションの取り方など、海外M&A後のPMIでは様々な課題があります。
そこで、実際に海外M&A後のPMIに取り組んでこられたご担当者にお集まりいただき、体験をもとにグローバルM&AのPMIについて座談会をお願いしました。なお、座談会の司会を林さんにお願いしました。まず、皆様の自己紹介からお願いします。
澤 「味の素のコーポレート戦略部の部長をしております澤です。当部の役割は、経営企画部とともに全社の事業ポートフォリオ戦略を作り、その戦略にしたがってM&Aを実行し、PMIの支援をしていくという機能が1つ。もう1つはスタートアップの企業やグループ外の企業との連携によるオープンイノベーションによって新規事業を育成していくという2つの役割を持っています。当部には、私を入れて12人のスタッフがおります」
横瀧 「アクセンチュアの横瀧と申します。戦略コンサルティング本部でM&A支援を専門に行うチームの日本統括マネジング・ディレクターを務めております。
当社は、『戦略コンサルティング』『デジタルコンサルティング』『テクノロジーコンサルティング』『オペレーションズ』『セキュリティ』の5つの組織が、業界を横断してコンサルティングやテクノロジー、アウトソーシング等のサービスを行う組織のほか、各業界に特化した組織があり、それぞれの専門家がお客様のニーズに合わせてチームを組んでサービスを提供しています。
私は日本およびシンガポールを含めたASEANのM&Aサービスの統括マネジメントをしております。私が統括しているチームは、戦略コンサルティング本部の中でもM&Aを専門に扱うチームで、M&Aの戦略立案から実際のディール
エグゼキューション、PMI(買収後の企業統合)、バリューアップまでの一貫したサービスを日本企業向けに提供しています。近年はクロスボーダーの案件がほとんどですが、デジタル戦略実現に向けてデジタル系スタートアップのM&A案件が近年増加しております」
林 「ルネサスエレクトロニクスの林です。企画本部 経営企画・財務統括部コーポレートアライアンス部長兼テクノロジー・マーケットインテリジェンス部長を務めております。コーポレートアライアンス部は、澤さんがおっしゃったようなコーポレートのM&A。売りも買いも行う部署で、テクノロジー・マーケットインテリジェンス部はマーケットやテクノロジーの動向を全社の経営戦略に反映させるための部隊です。インテリジェンスを活かし、足りないものを補うM&Aをやっていくことが効率的だろうということでその2つ部署を見ておりまして、規模的には2つ部署を合わせて二十数名ほどの組織になります」
PMIの計画準備~チーム編成、外部プロフェッショナルの使い方
林 「今回の座談会の問題意識としては3つあると思います。1点目はM&A、とりわけ近年増えている
IN-OUT、
OUT-INという、
クロスボーダーのM&Aにおける実務を実際にはどのように進めておられるのか。2点目がPMIの実際。3点目がPMIのプロセスで生じる問題を実務家はどのように解決しているのかという視点です。
せっかくの機会ですから、教科書に書いてある一般的な対応ではなく、実際に現場で起こった体験をもとにお話しいただければと思います。M&A戦略のフェーズにおいて、買収後の経営方法の仮説を考えることがPMIのスタートといわれます。DAY1までに買収側としてのPMI計画の準備についてどのように行っておられるのか。本社のチーム編成、外部プロフェッショナルの使い方についてお聞かせいただければと思います。
まず私の経験からお話させていただくと、さすがに最近は、買った後のことをまったく考えずにM&Aを行う企業は極めて少ないと思います。ポイントは、どれだけリアル感を持って買った後の絵を描けるかというところだと思います。弊社の取り組みについて申しますと、別に特別なことは何もないのですが、気をつけている点は、
デューデリジェンス(DD)チームには、可能な限りDA(Definitive Agreement:最終契約書)締結以降もPMIを担当するであろう社員を選定して、
クロージングまでとクロージング後に向けたターゲット企業とのコミュニケーションがDA締結後速やかにスタートできるように、役割変更は極力避けるようにしています。したがって、DDチームとPMIチームは基本的には一緒のメンバーで、DDチームの拡大版がPMIチームになるイメージです。
また、DDの段階で、できる限り詳細かつ具体的にシナジー項目は仮説を立てて洗い出し、時間軸に分けていつまでに誰が何をどこまでやるのかをできるだけ細分化して定量化しておき、DA締結後はすぐにそれらの実現可能性の検証と進捗をモニタリングしていくというところが非常に大事なポイントで、やはりそれをM&Aの交渉の途中でもきちんと視野に入れた上でやっていくということが肝なのかなと思っています。それと、外部専門チームの使い方についてはDDのチームアップをする時に外部のアドバイザーをたくさん使いますが、弊社の場合、交渉そのものは直接やることが大半なので、特に
FAの業務スコープは限定的であることが多いです」
一番の要は骨太な戦略仮説~DDの3つの目的
澤 「PMIの成否は、言うまでもなく買収の成否とイコールです。私は、買収が成功するかどうかの一番の要は