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[【小説】新興市場M&Aの現実と成功戦略]

2019年5月号 295号

(2019/04/15)

第49回『PMIの最終フェーズ』

神山 友佑(デロイト トーマツ コンサルティング パートナー)

【登場人物】

三芝電器産業 株式会社
Reddy Electricals (照明・配線器具製造子会社) への出向者 (CEO)
狩井 卓郎
Reddy Electricals (照明・配線器具製造子会社) への出向者 (営業管理担当役員)
小里 陽一
Reddy Electricals (照明・配線器具製造子会社) への出向者 (生産管理担当役員)
伊達 伸行
Reddy Electricals (照明・配線器具製造子会社) への出向者 (経営管理担当)
井上 淳二
Reddy Electricals (照明・配線器具製造子会社) への出向者 (経理担当)
朝倉 俊造
佐世保電器 (三芝電器産業の系列販売店舗)
店主
岩崎 健一
旗艦店の店長
古賀 一作

(会社、業界、登場人物ともに架空のものです)

(前回までのあらすじ)

 三芝電器産業の朝倉俊造はインドへの赴任を命じられた。1年半ほど前に買収したインドの照明・配線器具メーカー(Reddy Electricals)への出向である。
 日本では考えられない様々な課題に悩まされ、そして創業家側の旧経営陣との軋轢を生みながらも、朝倉の先輩である日本人出向者達は、生産革新や流通改革に矢継ぎ早に取り組んでいった。外部の血も取り込みながらPMI=M&A後の経営改革は本格化し、改革の成果を通して、ローカル従業員の経営参画意識も徐々に高まってきた。
 一方で、日本側の事業部や本社は必ずしも当事者意識を有しておらず、駐在員に対して原理原則に基づいた形式的な要求ばかりを押し付けてきていた。そんな中、レッディ社CEOの狩井卓郎は単身帰国し、三芝電器産業社長に「レッディ社を買収した理由」を問いかけた。
 狩井の意図を汲み取った社長は、半年後のレッディ社訪問を約束するとともに、日本の関係部門長に対して自ら直接「レッディ社に対する確認」を実施し、日本側の当事者意識を激変させた。
 社長訪印が迫る中、朝倉をはじめ出向者はこの機会を逃さずにPMIの成果を最大化できるよう、アクセルを踏み込んだ。


社長訪印直前の追い込み

 社長訪印が数週間後に迫るなか、日本人駐在員はそれぞれの持ち場で現場の準備に追われていた。開発・生産、マーケティング・販売、そしてコーポレート各ファンクションにおいて、大きなものから小さなものまで多様な取り組みが進められていた。
 伊達が進める本社地区工場でのセル式生産方式への切り替えも、目玉施策の一つだ。本国から急遽送り込まれたベテラン指導員は、日本とは異なる設計条件に加え、言葉がうまく通じない状況にも苦労していた。しかし彼らは、ローカルから選抜されたワーカー一人一人に熱心に技術を教えていた。
 またBetter Workplace Projectを任された朝倉は、工場や販売店など全インドの拠点へのファシリティ改善に追われていた。1カ月半ほど前にプランニングはすべて終わり、現在は実行段階に入っていたが、朝倉はその進捗を毎日朝と夕方に必ず確認するようにしていた。日本と異なり、よくわからない理由でモノが運ばれてこなかったり、据え付け工事が行われなかったりすることはインドの常だ。しかもそのまま放っておくと、数週間も数カ月も放置されたままになりかねない。予定通りに搬入・据え付け等が行われなければ、原則その日の内に、代替搬入日や場合によっては代替工事業者を決めるようにした。最初はどの業者も「すぐには無理だ」という反応を示したが、「今日中に代替日が決められなければ、契約解除も辞さない」というレッディ社側の強い姿勢に、業者側も従わざるを得なかった。

PMIの目に見える成果

 もともと残業の多かった駐在員であるが、社長訪印準備の追い込み期間は、これまでとはレベルの違う長時間勤務が続いた。今まではインド人ドライバーに気を使い、22時頃をめどに皆で一斉に帰宅するようにしていたが、日本とのテレビ会議がその時間までに終わることが難しくなっていたのだ。またセル式生産の一日の指導が終わった後で、その日の結果振り返りと改善ポイントの洗い出し、さらに翌日のトライアルに向けた部品配置場所や手順の見直しなどの試行錯誤をしていると、時間が0時を過ぎるのは当然であった。0時過ぎにドライバーに謝りながらチップを渡して帰路に就く日もあれば、帰宅を諦めて、チップだけを渡してドライバーだけを帰す日もあった。
 駐在員の顔には疲労の色が濃く出ていた。しかし不思議と皆元気であった。自らが赴任してから1~2年が経ち、これまで様々なトラブルが続いていたが、社長訪印を一つの総決算として捉え、

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