[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2013年9月号 227号

(2013/08/15)

第104回 タイヤ業界~ブリヂストンのM&A回顧から得られる示唆

 澤田 英之(レコフ リサーチ部長)
  • A,B,EXコース

1.苦難が続いた買収後のファイアストン経営

  1988年にブリヂストンが米ファイアストン(以下「FS社」という)を買収してから25年が経過した。図表1はブリヂストンの1983年12月期以降の連結売上高と当期純利益の推移を示したものである。当期純利益をみるとこれが大きく落ち込んだ期間は3回ある。1回目は1989~91年、2回目は2000~2001年、そして3回目は2008~2009年である。

(図表1)ブリヂストンの連結売上高と当期純利益の推移

  2008~2009年の業績悪化はリーマン・ショックを契機とするマクロ経済の急激な悪化が要因であるが、1989~91年、2000~2001年はFS社を巡って発生した問題が業績悪化の要因であった。今でこそブリヂストンのFS社買収はIN-OUTの成功例として評価する見方が多いが、実際には買収後、幾つかの難題に直面している。

  ブリヂストンは当初、FS社とブリヂストン75%、FS社25%の出資によって合弁会社を設立する意向であった。しかし、イタリアの大手タイヤメーカー、ピレリがFS社買収に動き始めたためブリヂストンも買収に方針を転換したという。ブリヂストンはピレリを大きく上回る価格を提示し買収に漕ぎ着けたが、買収金額は3300億円に上り単独売上高の約6割を占める当時としては高額なものとなった。

  ブリヂストンがここまでしてFS社を傘下に収めた背景としては次のような点が指摘されている。

 

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