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2017年4月号 270号
[対談] M&Aでグローバルトップ戦略を加速するサトーホールディングス ~自動認識ソリューションビジネスの「最後の1cm」を埋める~ 有料記事です

 松山 一雄(サトーホールディングス 代表取締役執行役員社長 最高経営責任者(CEO))
 松田 千恵子(首都大学東京大学院社会科学研究科 教授、サトーホールディングス 社外取締役)

―― 本日は、サトーホールディングスの代表取締役執行役員社長の松山一雄様と首都大学東京教授でサトーホールディングスの社外取締役をされている松田千恵子様に、サトーの海外M&Aを活用したグローバルトップへのチャレンジの実際とそれを支えるサトーのユニークな「強み」についてご紹介いただくとともに、海外M&A成功のポイントについて議論いただきたいと思います。よろしくお願いします。 1.サトーホールディングスの成長戦略~「自動認識ソリューション事業」で世界トップを目指す サトーの事業の変遷とIoT時代に向けた展望 松田 「サトーホールディングス(以下、『サトー』)は、知る人ぞ知るの、ユニークな会社だと思います。分かりやすく言うと、バーコードやICタグのプリンターやその消耗品、食品・化粧品・医薬品の容器や酒類のボトルなどの商品などに貼ってある各種ラベル(=プライマリーラベル)などを作っている会社です。他方、サトーの今の事業の源流は、1960年代に台頭してきたスーパーマーケットなどの商品に値札を貼る『ハンドラベラー』を開発したことにさかのぼるとのこと。進化するサトーの事業の変遷から、お伺いします」 松山 「創業は1940年で、今年で創業77年目になります。創業者は佐藤陽で、一言で言うと町工場の親方ですね。戦後の復興期ですから、『省力化で社会のお役に立ちたい』というのが理念で、竹を加工する機械や、つい最近までデパートなどで使われていた、商品を紐で結ぶ結束機を作っていました。しかし、時代の流れで需要が減り、創業20年後の1960年頃には会社は危機的状況になっていました。ちょうどそのころスーパーが高成長してきた。大量の商品に値札を貼るのですが、切手のように、のりを塗ったシールに手書きで値段を書いて水をつけて貼る。その大変さを目の当たりにした佐藤が、1962年に機械で値札を貼り付ける世界初のハンドラベラーを開発し、会社を蘇らせました」 松田 「片手でカチャカチャと一枚ずつ貼る機械ですね。スーパーなどでよく見かけます」 松山 「次の大きな変化がまた20年後に訪れました。アメリカでバーコードが発明され、1980年代に、POSシステムが普及し始めた。ハンドラベラーは、基本的にメカの技術で対応できましたが、バーコードになると、エレクトロニクスの技術がないとできない。このままバーコードの普及が進むと、我々のビジネスがなくなってしまう。そこで、社内外の人材をかき集めて、未知の分野の電子プリンターの開発に社運をかけて取り組んだわけです。1981年に世界初のバーコードプリンターを開発することができ、なんとか大きな変化を乗り越えました。バーコードプリンターのサプライ商品(消耗品)であるラベルも売り始めました。サトーはこの業界では老舗と言われていますが、技術面では実はパイオニアだったわけです。次に手掛けたのが、保守サービスです。工場で大量の商品にラベルを貼る工程が、故障で止まってしまうと、大変なロスに繋がるということで、保守の依頼が増え、また、プリンターに簡単なアプリケーションソフトをつけて、倉庫の棚卸管理システムを構築してほしいといったソリューションを頼まれるようになった。プリンターとラベルといった『モノ売り』から徐々に『コト売り(ソリューション)』に向かってきたわけです。現在、バーコードプリンターなどのハードウェアとサプライ商品を中心に、売上高1055億円、営業利益64億円、海外売上高比率約40%の会社になっています」 松田 「『自動認識ソリューション事業で世界ナンバーワンになる』というビジョンを掲げていますが具体的にはどういうことでしょうか」 松山 「バーコードやQRコードの時代になると、商品とデータベースの情報を紐付けすることが容易となり、生産管理や物流などにその情報を活かすことが可能になりました。当社では、バーコードやICタグなど自動で情報を認識したり入力したりできる技術(自動認識技術)を活用した独自のビジネスモデルDCS&Labeling(Data Collection Systems & Labeling)によって、これらのニーズに応えています。物流倉庫を例にとると、個人消費者がネット上で注文した商品が1個単位で即日手元に届く時代です。倉庫では、商品の入荷・保管・発送業務を行うわけですが、この人手不足の時代に正確にかつ効率よくやらなければならない。このような課題に自動認識技術で応えるのが当社の得意とするところです。例えば、入荷した商品の情報を自動認識したり、倉庫内にある作業者の位置を3Dレベルで把握する。出荷指示が来ると、作業者の位置情報から商品保管場所までの最短距離を割り出して、ウエアラブル端末でナビゲートし移動時間を大幅に減らす。こういったことができるわけです。   今はまだ、自動認識の対象はバーコードやQRコードが約98%を占めていますが、徐々にICタグが使われるようになってきました。GPSや各種センサーなどのデバイス、音声や画像などの認識技術との組み合わせ、さらにIoTやAIとの連携が進むと、大変な進化を遂げると期待していて、様々な技術をどんどん取り込もうとしているところです」 サトーのコア・コンピタンス~『情物一致』は『現場』にある『最後の1cm』を繋ぐこと 松田 「こうしたサトーの事業の進化を支えるコア・コンピタンスは何でしょうか」 松山 「実は、ハンドラベラー時代から変わっていないのですが、『情物一致』ということです。『物』や『人』に必要な情報を紐付ける。業界ではタギング(あるいはラベリング)と言いますが、この紐付けによって、はじめて情報に価値が生まれるわけです。例えば物流や流通の分野では、商品に必要な情報が貼り付くことで、『正確・省力・省資源』という価値が、あるいは食品や医薬品の分野では、原材料や流通履歴などの情報を提供することで『安心』という価値が生まれます。紐付けによって価値を創造する。『情物一致』とはそういう意味です」 松田 「『情物一致』を支えるという意味で、『現場』ということを強調されていますね」 松山 「物や人は現場で動いていますから、『紐付け』というソリューションの価値を強みとする以上、必然的に私たちは現場に行かないといけない。自動認識ソリューション事業の世界ナンバーワンを目指すためには、『現場』が重要なキーワードになります」

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