[M&Aトピックス]

(2022/10/21)

第16回M&Aフォーラム賞が決定―M&Aフォーラム賞『RECOF賞』などに4作品を選定

前列左から松本 茂 氏(京都大学経営管理大学院特命教授、城西国際大学大学院教授)、川本真哉 氏(南山大学経済学部教授)、落合 誠一会長(東京大学 名誉教授)、岩田 一政選考委員長(公益社団法人日本経済研究センター代表理事・理事長)、鈴木 一功 氏(早稲田大学 大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授)、田中 亘 氏(東京大学社会科学研究所教授)、先崎 博文 氏(株式会社朝日新聞社(一橋大学経営管理研究科2022年3月修了))
左から松本 茂 氏(京都大学経営管理大学院特命教授、城西国際大学大学院教授)、川本 真哉 氏(南山大学経済学部教授)、落合 誠一 会長(東京大学 名誉教授)、岩田 一政 選考委員長(公益社団法人日本経済研究センター代表理事・理事長)、鈴木 一功 氏(早稲田大学 大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授)、田中 亘 氏(東京大学社会科学研究所教授)、先崎 博文 氏(株式会社朝日新聞社(一橋大学経営管理研究科2022年3月修了))
【受賞作品】

(所属は執筆または応募時点)



◆M&Aフォーラム賞 正賞『RECOF賞』 2篇
『日本のマネジメント・バイアウト 機能と成果の実証分析』
【著者】川本真哉(南山大学経済学部教授)

『バリュエーションの理論と実務』
【編著者】鈴木一功(早稲田大学 大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授)
田中亘(東京大学社会科学研究所教授)

◆M&Aフォーラム賞 奨励賞『RECOF奨励賞』 1篇
『海外M&A新結合の経営戦略』
【著者】松本茂(京都大学経営管理大学院特命教授、城西国際大学大学院教授)

◆M&Aフォーラム賞 選考委員会特別賞『RECOF特別賞』 1篇
『日本企業のM&Aにおける要因分析』
【著者】先崎博文(株式会社朝日新聞社(一橋大学経営管理研究科2022年3月修了))

14作品が応募

 M&Aフォーラム賞選考委員会は、2021年度(令和3年)「第16回M&Aフォーラム賞」に4作品を選定し、10月5日授賞式が行われた。

 「M&Aフォーラム」は、2005年の内閣府経済社会総合研究所の「M&A研究会」において民と官との連携ができる民間ベースのフォーラムが提唱されたことを受け2005年12月に設立され、今年で17年目を迎える。

 理論的、実証的及び実務的な視点から、進歩、変化するM&A事情の研究・調査を行い、今後の我が国におけるM&Aのあり方について提言を行うとともに、主に企業人を対象にした「M&A人材育成塾」の運営等の活動を通じて、M&Aの普及・啓発、人材や市場の育成に資することを目的としており、さまざまな関係分野の有識者、実務専門家、企業関係者が参加する場となっている。

 「M&Aフォーラム賞」は、2000年度に「M&Aに関する社会科学的観点からの研究論文の執筆で顕著な業績をあげた学生・院生を顕彰する懸賞論文制度」としてレコフが創設した『RECOF賞』が前身で、M&Aフォーラムからの強い要請もあり、学識経験者、行政担当者、M&A専門家、企業関係者(実業界)ならびに大学院、大学、各種専門学校を含めた学生にいたるまで幅広い分野に対象を広げ、06年にM&Aフォーラム賞『RECOF賞』として引き継がれた。

 第16回を迎えた今回は、法律、経済、経営、税務・会計、ファイナンスなどをテーマにそれぞれの観点で掘り下げた、14の書籍・論文の応募があった。

 選考委員長の岩田一政氏(公益社団法人日本経済研究センター代表理事・理事長)のもと、大杉謙一氏(中央大学法科大学院教授)、西山茂氏(早稲田大学ビジネススクール教授)、丹羽昇一氏(レコフデータ専務理事)の3人の委員によって、

①作品が創造性に富んでいること
②理論的、実証的な分析を行っていること
③実用性・実務への応用可能性が高いこと
④問題点を先取りし、その解決の糸口を論じたもの
⑤M&Aの啓蒙に資するもので、業界全体への影響力が高いと判断されるもの

などが主な基準で審査が行われた。


岩田選考委員長による講評

岩田氏
岩田 一政 氏
 岩田選考委員長は、「本年の特徴は、日本のM&Aの歴史を振り返り、その成果を再検討し、将来を展望する作品が多かったように思います。また、海外M&A、MBO、企業の価値評価や評価差額に関する包括的な研究書など質の高い作品が多数寄せられました。さらに近年注目されている経済安全保障に関連した外為法と対内直接投資の関係やプライベート・エクイティ・ファンドとESG投資についての作品などもあり、応募作品の順位付けを巡って、最後まで慎重に熟議を重ねました」

として、次のように講評を述べた。

「M&Aフォーラム賞正賞『RECOF賞』の1作品目となります、川本真哉著『日本のマネジメント・バイアウト 機能と成果の実証分析』は、経営陣による自社株買収(MBO)の経済的機能に着目して、その役割とパフォーマンスをデータに基づいて包括的に実証分析した優れた作品です。

 MBOを当該企業の上場廃止を伴う「非公開化型」と子会社が親会社から独立する「ダイベストメント型」に分類した上で、その動機と買収によるプレミアムの決定要因、成果について総合的に検討し、評価しています。本書はMBO研究の基礎的な土台となる研究書であり、政策上の課題についても示唆するところが多い作品であります」

と高く評した。

 続いて、「M&Aフォーラム賞正賞『RECOF賞』の2作品目として、鈴木一功、田中亘編著『バリュエーションの理論と実務』は、M&Aとファイナンスにおける企業価値評価の実務と課題を、とりわけ会社の裁判例を念頭において検討した重厚な研究書であります。

 M&Aを上場企業と非上場企業に分け、また構造的な利益相反を伴うケースと伴わないケースについて概念と論点を整理した後、日米の会社裁判例の法的論点と問題点を手際よく紹介しています。裁判所が現代ファイナンス理論を十分理解していないことによる弊害を除去しようという意欲が伝わってくる書であります」

と高く評した。

 続いてM&Aフォーラム賞奨励賞『RECOF奨励賞』として、『海外M&A新結合の経営戦略』について述べた。

「松本茂著『海外M&A新結合の経営戦略』は、2001年から19年間にわたり日本企業が実施した海外M&Aが累計8833件、買収金額116.7兆円に上ることを踏まえ、1985年以降の草創期と発展期にわけ、草創期には失敗例が多かったが、発展期には成功例が増えてきていることに着目し、日本企業が海外M&Aでつかみはじめた新たな競争力の萌芽を伝えることを目指しています。

 海外M&Aで飛躍した6企業の経営の在り方についての分析や成熟市場占有、供給連鎖占有、製品群拡張、新市場形成、防御の5つの買収モデルの提示は興味深いものがあります」

と評した。

 続いて、M&Aフォーラム賞選考委員会特別賞『RECOF特別賞』として、『日本企業のM&Aにおける要因分析』について述べた。

「先崎博文著『日本企業のM&Aにおける要因分析』については、日本企業がM&Aを志向する要因についてその実態と経営手段としてのM&Aの役割を探った作品であります。

 この作品の貢献は、1万7000件を超えるパネルデータを駆使し、キャッシュリッチな企業、外国人株主の多い企業、ストックオプション制度導入企業、過去3年以内にM&Aを実施した企業は、M&A実施確率が高まることを明らかにしていることです。2008年から2019年の11年間の日本企業によるM&A活動を包括的に実証している点を評価しました」

と締めくくった。
  • 1
  • 2

バックナンバー

おすすめ記事

アクセスランキング