[【バリュエーション】Q&Aで理解する バリュエーションの本質(デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社)]

(2025/05/08)

【第5回】マルチプル評価の落とし穴

高須 啓太(デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 シニアマネージャー)

(監修)
中道 健太郎(デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 パートナー)
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 類似会社比較法(Comparable Multiple Valuation Method)とは、評価対象の会社と類似する上場会社の財務指標を参考にして株式価値を算出する手法である。上場類似会社の財務指標をもとにした倍率を用いるため、マルチプル(倍率)法とも呼ばれる。類似会社比較法において必要となるパラメータは、以下の2つのみである。
① 財務指標(売上高やEBITDA、当期純利益など)
② マルチプル(上場類似会社を参考に決定)
 直感的にわかりやすく、簡便的に価値算定が可能であるため、かつ、市場参加者目線を反映しているという客観性もあり、バリュエーションにおいてはDCF法と並んでよく用いられる評価手法である。M&Aの世界では、財務指標として「企業価値(EV)/EBITDA倍率」がしばしば用いられるが、これらのパラメータをどのように考えるかは奥が深い。今回は類似会社比較法についてよく質問が出る事柄について取り上げたいと思う。

Question
類似会社比較法では、実績マルチプルと予想マルチプルのどちらを使うのが適切だろうか。
 財務指標および適用するマルチプルにおいて、直近期や直近12か月の実績EBITDAを基にしたマルチプルを使うのがよいか、それとも当期予想や次期予想EBITDAを使うのがよいかは、よく論点となる。実務では予想マルチプルを使うことが多いが、その理由を以下で解説したい。


■筆者プロフィール
高須 啓太(たかす・けいた)
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 シニアマネジャー
都市銀行、M&Aアドバイザリーファームを経て現職。デロイト トーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社では、無形資産価値評価、米国基準、国際会計基準ののれんの減損テスト支援、株式価値および事業価値評価等のバリュエーションサービスに関する業務に従事、現在に至る。

■監修者プロフィール
中道 健太郎(なかみち・けんたろう)
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 パートナー
トロント、ニューヨークでの監査経験を経て、1997年に来日。金融機関・金融商品・不良債権の評価、海外資源・インフラ案件の評価、機械設備の評価、訴訟・競争法関連の評価・証言を含め、幅広い業種・状況におけるバリュエーションサービスに従事、現在に至る。

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