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[寄稿・寄稿フォーラム]

2019年9月号 299号

(2019/08/15)

『公正なM&Aの在り方に関する指針』の解説

玉井 裕子(長島・大野・常松法律事務所 パートナー)
西村 修一(長島・大野・常松法律事務所 パートナー)
濱口 耕輔(長島・大野・常松法律事務所 パートナー)
1. はじめに

 経済産業省は本年6月28日に「公正なM&Aの在り方に関する指針」(以下「本指針」という。)を公表した。本指針は、MBOおよび支配株主による買収を中心に、主に手続面から、公正なM&Aの在り方を提示するものである。より具体的には、その公正性を担保するための実務上の措置(以下「公正性担保措置」という。)として一般に有効性が高いと考えられるものを取り上げ、これらについて、その機能や望ましい実務の在り方を示している。

 本指針は、2007年9月4日に策定されたいわゆるMBO指針(注1)の改定版であるが、対象となる取引類型の拡大や公正性担保措置の内容の具体化・精緻化を含め、MBO指針に含まれていない点は多岐にわたる。「一般に公正と認められる手続」を通じて形成された公開買付価格は、特段の事情のない限り、公正な価格と認められると判示したジュピターテレコム事件最高裁決定(注2)が出された以降も、「一般に公正と認められる手続」の具体的な内容についてはいまだ実務上のコンセンサスが出来ているとは言いがたい状況にあったが、本指針における公正性担保措置に関する記述はこの点についての示唆に富む内容になっている。MBO指針がその当時増加しつつあったMBOに関する実務において果たした役割は大きかったが、本指針も今後のM&A実務に大きな影響を与えることが予想される。

 以下では、本指針の主要なポイントについて解説していく。


2. 本指針の対象となる取引類型

(1)対象となる取引類型の拡大

 MBO指針は、MBOを直接の対象にしていたが、本指針は、MBOのみならず、支配会社が従属会社の株式の全部を取得する取引(支配株主による買収)にもその対象を広げている(但し、いずれも対象会社が上場会社である場合に限定されている。)。ここでいう支配株主による買収には、公開買付けを行った後に、公開買付けに応募しなかった株主をスクイーズアウトすることにより従属会社の完全子会社化を達成する、いわゆる二段階買収だけではなく、公開買付けを前置させることなく株式交換等の組織再編行為により完全子会社化を達成する一段階の買収もその対象に含まれている点、買収対価についても、現金に限られず、買収会社の株式を含む点については留意が必要である。

 MBO指針の策定からは既に10年以上経過しているが、その間の取引件数を見ると、MBOの件数は下火になっている一方で、支配株主による買収の件数は(減少傾向は見られるものの)常に一定数以上存在し、上場子会社の在り方が活発に議論されている近時の状況も踏まえると(注3)、今後もその傾向は続くものと思われる。以下で述べるとおり、MBOの問題点とされる構造的な利益相反性と情報の非対称性の問題は、支配株主による買収においても、同様に存在する問題であるため、本指針の対象に加えられた。

(2)両取引に共通する問題とその相違点

 本来当事者間の自由に委ねられているはずのM&Aのプロセスについて、MBOおよび支配株主による買収の場面においては一定のルールを整備する必要があると考えられているのは、これらの取引には、類型的に構造的な利益相反性情報の非対称性の問題が存在し、これを放置すれば一般株主の利益、ひいては日本の資本市場に対する信頼が損なわれてしまうおそれがあるためである。すなわち、MBOでは、

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