[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2013年12月号 230号

(2013/11/15)

第107回 機械業界 グローバルニッチの構築へ向けた海外M&Aが今後も続く

 マール企業価値研究グループ
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  機械産業は、日本の製造業の中で自動車と並び国際競争力を保っているセクターのひとつである。独自の技術力を磨き、参入障壁の高い独自のニッチ市場で高いシェアを持つ企業が多い。日本の機械メーカーによる最近の海外M&Aをみると、それぞれの得意な事業領域で不足している技術や製品、販路や市場を取りに行くという共通点がうかがえる。機械業界のM&Aは、今後も、そうしたグローバルニッチの構築を目指した経営資源補完型のM&Aが中心となるだろう。

機械メーカーの海外M&Aの動き

■ 機械業界にはグローバルニッチ企業が多い


  日本企業、特に製造業の競争力低下が叫ばれる中で、機械産業は自動車産業と並んで、日本が国際競争力を保ち続けているセクターのひとつである。

  「2013年版ものづくり白書」(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)では、リーマンショック以降エレクトロニクス産業の貿易黒字が縮小する一方で、輸送用機器と一般機械が依然として高水準の貿易黒字を維持しているとしている。各産業の貿易黒字額の推移を比較すると、リーマンショック直後の2009年から2012年にかけて電気機器では4.3兆円→3.0兆円と減少傾向に歯止めがかかっていないのに対して、輸送用機器は10.3兆円→12.7兆円へ、一般機械は5.4兆円→7.8兆円へ回復している。

  同白書ではまた、今後の日本企業の方向性として「グローバルニッチ市場」での世界一を目指すべきと述べている。市場規模が数10兆円に達するようなメジャー市場ではなく、規模は小さくとも、高い技術力で差別化し、参入障壁を構築することが可能なニッチ市場でトップ企業を目指すべきという考え方である。

  そうした指摘を待つまでもなく、日本の機械メーカーにはすでにグローバルニッチの市場で世界トップシェアを持つ企業が多数存在する。空圧制御機器で世界首位のSMC、産業用ロボット向け精密減速機で世界シェア6割を誇るナブテスコ、工作機械等に組み込まれる直動案内機器を世界で初めて製品化し、同分野で世界一の企業であるTHK等が一例として挙げられる。

  機械産業は比較的高い競争力を維持しているとはいえ、欧米企業との競合に加えてアジア企業からの追い上げに晒されており、他産業と同様にグローバル市場での勝ち残りをかけた熾烈な競争の中にあることに変わりない。

  機械メーカーにとってM&A、特に海外市場でのM&Aは極めて重要な戦略である。以下では、機械メーカーの海外M&Aを中心に最近の主要な事例をご紹介するとともに、M&Aの背景や狙いを探ってみたい。共通するのはグローバルニッチの構築へ向けた補完型のM&Aが中心であるという点だ。

  なお、機械産業といっても、工作機械から建設機械、ベアリングに至るまでその分野は幅広い。本稿では、代表的な機械メーカーとして主に東証1部機械業種に属する企業による海外M&Aの事例を取り上げることにする。

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