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[M&A戦略と会計・税務・財務]

2020年9月号 311号

(2020/08/17)

第157回 パンデミック下の企業経営と税務ガバナンス

荒井 優美子(PwC税理士法人 タックス・ディレクター)
1. 経済活動の再開と新たなリスク

 政府は、2020年5月25日に、4月7日から実施していた緊急事態(7都道府県)の全面解除宣言を行うとともに、緊急事態解除後も、一定の移行期間を設けて、外出の自粛や、施設の使用制限の要請などを緩和しつつ、段階的に社会経済の活動レベルを引き上げていく方針を明らかにした(「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」2020年3月28日(2020年5月25日変更))。新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナウイルス」)拡大防止下では、「新しい生活様式」の定着や業種ごとに策定される感染拡大予防ガイドライン等の実践が前提とされ、この取組みにより、感染拡大の防止と社会経済活動の維持の両立が持続的に可能になると考えられている。

 日本国内の新規感染者数は、4月11日(720人)をピークにその後は減少に転じ、6月末までは概ね2桁台で推移していた。7月になると新規感染者数が急増し、7月18日(662人)には4月のピーク時のレベルにまで上昇した。新型コロナウイルス第2波懸念は海外でも高まっており、中国や米国の地域では経済活動再開を一部撤回しているところもある。

 国際通貨基金(IMF)は7月17日に、米国経済を分析した年次報告書を公表し、新型コロナウイルス感染の急拡大が「最大のリスク」と警告し、景気回復は長い道のりになると分析した。「経済再開が部分的に逆戻りしている」と、景気の下振れを憂慮し、2021年の実質GDP(国内総生産)成長率の見通しを従来の4.5%から3.9%に下方修正した(日本経済新聞2020年7月17日)。

 新型コロナウイルスの収束が未だ見通せない状況にあるが、多くの国々が段階的な経済再開を進め、危機が新たな段階に入っていることは明白であるとし、持続的な回復を共有するためのより高い強靭性を実現するには、(1)教育、医療、社会保護など人々への投資、また、危機がもたらしかねない急激な格差拡大を阻止するための投資、(2)公共支出の賢明な配分などによって、低炭素かつ気候変動耐性が高い成長を支援、(3)デジタル変革の最大限の活用のための、行動が必要(7月16日、IMFのゲオルギエワ専務理事による見解書(注1))とされる。

【図表1 世界経済見通し(WEO)によるGDP水準の予想】

 IMFが公表した「2020年6月「世界経済見通し(WEO)改定見通し」(2020年6月24日に公表)(注2)では、2020年の世界経済の成長は4.9%減と予想され、回復は従来の予想より緩やかになると予想する(図表1参照)。「感染率が低下している国々で、今回の予想でこれまでより回復ペースが鈍化しているのは、2020年後半にかけても社会的距離の確保が続くこと、2020年の第1および第2四半期のロックダウン期間中の経済活動への打撃が予想以上に大きかったことによる影響(供給能力へのダメージ)の拡大、さらには危機を生き延びた企業が職場の安全や衛生への取り組みを強化する中で落ち込む生産性を反映している。感染率の抑制に苦しんでいる国々においては、ロックダウンの長期化によって経済活動にさらなる打撃が生じるだろう」との分析を示している。

 新型コロナウイルスの感染状況による経済政策の方針については、「ロックダウンが必要な国では経済政策を通じて、適切な対象に向けた手厚い対策による家計所得減少の影響緩和、強制的な活動自粛によって苦しんでいる企業への支援を続け」、「経済を再開する国では、回復の進展にともなって特定層を対象とする支援を段階的に終了し、需要拡大に向けた刺激策や、パンデミック後に恒常的な規模縮小が見込まれる産業部門からの資源の再配分を円滑化および促進するような政策を実施すべき」ことを推奨する。

 このような新型コロナウイルスの状況を踏まえ、本稿ではパンデミック下の企業経営と税務ガバナンスの在り方について検討する。


2. 2020年骨太方針(案)の策定

 2020年7月17日、「経済財政運営と改革の基本方針2020~危機の克服、そして新しい未来へ(案)」(以下、「2020年骨太方針(案)」)(注3)が経済財政諮問会議で策定された。2020年骨太方針(案)の成長戦略は、新しい働き方の定着、決済インフラの見直し、デジタル市場への対応、オープン・イノベーションの推進などを柱として策定されている(経済財政諮問会議での安倍総理の挨拶)。

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