[M&Aトピックス]

(2021/12/03)

「事業承継税制」の拡充・延長はなるか?

大詰めを迎える「2022年度税制改正大綱」

 与党が2021年12月中旬までに取りまとめる2022年度税制改正大綱に向けて、政府と与党間での議論が佳境を迎えている。経済産業省と中小企業庁が12月2日、経済産業部会(石川 昭政経済産業部会長)に素案を示した。 

 産業界や各業界団体からは、事業承継の促進に資する税制見直しを求める声が出ており、事業承継やポストコロナを見据えた企業の構造転換を促すため、どのような税制上の措置が講じられるかが注目点になっている。

 事業承継関連税制では、円滑な事業承継実施のため、税制面でどのような措置が盛り込まれるかどうかが焦点だ。経済産業省・中小企業庁は現在、時限措置となっている事業承継税制の見直しを検討している。各業界団体からも、事業承継税制の延長を求める意見が数多く出ていた(図表)。

 事業承継税制は、事業承継時の贈与税・相続税の負担を実質ゼロにする時限措置。法人版は18年度に抜本拡充され、個人版は19年度に新設された。

 この税制措置を受けるためには、都道府県で事業承継に係る「特例承認計画」の確認申請を5年間に行い、10年間に実際の事業承継を済ませる必要がある。つまり、実際に活用する場合、法人の場合は23年3月まで(個人の場合は24年3月まで)に確認申請を行い、実際に事業承継を行う期限が、法人の場合が27年12月(個人の場合は28年12月まで)になる。

 しかし、コロナの影響により、「事業計画を考えるのは難しい」「この期間内には承継計画まで考えられない」との声が中小企業などから寄せられていた。こうした意見を踏まえて、中企庁は承継計画の提出期限の延長を検討している。円滑な事業承継支援に向けた措置が講じられるかどうかが注目される。

(図表)各業界団体の事業承継関連制度に関する主な意見

要望の趣旨要望主体
  • 事業承継税制の拡充等 事業承継税制について、一層の拡充を行うこと
全国銀行協会
  • 株式の信託を利用した事業承継について、納税猶予制度の適用対象とすること
信託協会

  • 事業承継税制の適用状況を把握し、中小企業の円滑な事業承継に資する税制として維持すること
日本公認会計士協会
  • 法人版事業承継税制(非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除)
日本公認会計士協会
  • 法人版事業承継税制(特例措置)に係る対応期限を延長
日本税理士会連合会
  • 取引相場のない株式等の評価の適正化を図ること
日本税理士会連合会
  • 日本の納税猶予制度は、欧州主要国と比して限定的な措置にとどまっており、欧州並みの本格的な事業承継税制が必要。特に事業に資する相続については、事業従事を条件として他の一般資産と切り離し、非上場株式を含めて事業用資産への課税を軽減あるいは免除する制度の創設が必要
全国法人会総連合
  • 取引相場のない株式の評価については、企業価値を高めるほど株価が上昇し、税負担が増大する可能性があるなど、円滑な事業承継を阻害していることが指摘されている。取引相場のない株式は換金性に乏しいこと等を考慮し、評価のあり方を見直す必要がある
全国法人会総連合
  • 一般事業承継と特例事業承継とが並立している制度について、10年間の特例とされている特例事業承継制度を恒久的制度とし、一般事業承継制度を廃止
TKC全国政経研究会
(出所)各業界団体資料より作成

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