投資分野が拡大する中でアライアンスの重要性が増大する自動車業界
―― まず、グローバルな自動車業界の現状とルノー・日産自動車・三菱自動車の三社連合の意味についてはどのように見ていますか。
「大手自動車メーカーというのは、各社ともグローバルに事業を営んでいて、主要市場では各国の大手メーカーが激しい競争を繰り広げています。そのため収益性も決して高くはない業界とも言えます。
自動車各社は相次いでBEV(電気自動車)、PHV(プラグイン・ハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)などの環境対応車の割合を高める目標を発表していますが、それだけではなく、各社が資金を投じなければいけない対象は、自動運転、シェアリング、AIと様々な分野に広がっています。従って、各社とも生産効率の改善やコスト削減に一層注力し、その資金を新しい投資分野へ回す努力が必要になっています。技術革新や他業種の参入で、各社の優位性が変化する可能性も潜在的に高まる中、他社との提携の重要性も増すと見ています。
こうした中、日産・ルノーについては1999年以来20年間、アライアンスという枠組みが続いており、原材料の調達、研究開発などを共同で行うことで、大きなメリットが出ています。実際、ルノー、日産、三菱の同盟は2017年に57億ユーロの相乗効果を生み出しており、これは単純に計算すると、3社の自動車部門の総売上高の約3%に相当します」
ルノー、日産、三菱の3社連合の今後~3つのシナリオとは
―― 今回、カルロス・ゴーン氏は金融上の不正行為があったとして逮捕され、それに伴いルノー、日産、三菱の会長職を解任されました。日産自動車が設置した外部の弁護士らでつくる「ガバナンス改善特別委員会」が3月末をめどに、日産に向けて改善策を提言する予定ですが、今後三社連合がどうなるのかが注目されています。今後の三社連合についてどのようなシナリオが考えられますか。
「ゴーン氏は、ルノー・日産・三菱連合を取り纏めるアンカーとして機能し、日産の復活と、三社に拡大した緩やかな統合を進めてきたことで、評価されてきました。三社は合計すると、17年の世界の自動車販売台数の11%、約1060万台を占めています。しかし彼の解任は、三社が抱える重要な人的リスクを浮き彫りにしました。その結果、同盟関係が弱体化し、アライアンスの構造を不安定にする可能性が心配されています。
現在、ルノーは日産の株式の43.4%を所有し、日産は議決権なしでルノーの15%を保有しています。日産はまた、16年に三菱自動車の34%を取得しました。アライアンスの外では、日産とルノーは、ダイムラーとも関係を維持しています。(下図参照)
今後の3社の同盟関係については、1)日産がルノーとの同盟関係を解消し、真に独立する、2)ルノーが日産に対する持分を増やし、三社の事業を統合する、3)日産とルノーが現状の同盟関係を維持し、業務をさらに緊密にする、という3つのシナリオが考えられます。以下、それぞれのシナリオを分析してみましょう」