[【企業変革】ポストコロナ時代の経営アジェンダ ~ ゲームのルールが変わる瞬間 ~(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)]

(2020/10/21)

【第4回】働き方・ワークスタイル変革

汐谷 俊彦(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員)
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オフィス不要論の揺り戻しは起こる

 コロナ禍を契機に突然始まったリモートワークですが、多くの人はリモートワークを好意的にとらえています。毎日の通勤から解放されるだけでなく、子育てや介護など家庭の事情に応じた働き方ができるようになりました。業種、職種によりさまざまであるものの、グローバルに展開しているような大企業ほど、安全・健康を第一に従業員の在宅勤務を義務付けている印象です。従業員エクスペリエンス (注)の観点からみて、完全100%出社を前提にした制度はもはやなりたたないでしょう。そういう会社には徐々に優秀な人材が集まらなくなります。

 リモートワークのイノベーションによって、単なる作業場としてのオフィスは需要減少につながることは間違いないでしょう。地理的な制約がなくなることによってゲームチェンジが起こります。本質的な変化は副業の増加と、地方からの参画がすすむことにより、企業の生産性を高めることにつながるでしょう。都市に住んでいるから機会が多いわけではなく、地理的な制約が低くなることによって、外国に住む日本人や、外国人との競争が加速するかもしれません。

 このコロナ禍がおさまったとしても、誰ももう満員電車に乗りたくないでしょう。この気持ちを元に戻すことは、まずできません。従って、世の中では、オフィス不要論が支配的です。わざわざ都心の一等地に高い家賃を払ってオフィスを構える必要があるのか、と。

 一方で、オフィスの果たす重要な機能としてなくてはならないものがあります。イノベーション、アイディエーション、アイデンティティとブランドです。

  • セレンディピティによるイノベーションをおこす場(廊下やエレベータで偶然出会った会話から生まれる発想など)
  • 喧々諤々の議論の末、新たな発想、アイデアを生み出す場
  • 従業員が自身 の帰属・アイデンティティを確認する場
    • 入社してから一度もオフィスにいったことがないままそれぞれの部門に配属された新入社員など、心のよりどころもなく 過ごしているといった状況を時に聞きますが、これはどう考えてもサステナブルではない状況です。
  • 社内外のタレントを惹きつける、顧客に対するブランドを体現・象徴する場


 これらのオフィス機能は、郊外にサテライトオフィスを作っても解決しません。ましてや地方に移転することは逆効果にさえなります。行き過ぎたオフィス不要論には近い将来、必ず揺り戻しが来ると思われます。

(注)従業員エクスペリエンスとは、従業員が会社の中で働くことでえられるすべての経験のこと。従業員満足度やエンゲージメントを高めるために注目される。

ハイブリッドワークスタイルも簡単ではない

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デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

■筆者略歴

汐谷 俊彦(しおたに・としひこ)
外資系コンサルティング会社等を経て現職。製造業/テクノロジー/エネルギー/化学/ヘルスケア/商社など幅広い業界に対して成長戦略策定、事業ポートフォリオ見直しといった戦略面での支援や、M&A戦略策定に始まり、デューデリジェンス、PMI計画策定および実行支援・買収後のオペレーション改善といったM&Aライフサイクル全領域において幅広い経験を持つ。特にクロスボーダーM&Aやカーブアウト買収といった複雑で難易度の高い案件を数多く手掛けている。また、日系企業による海外企業の買収を契機に、その後のグローバル化に向けたトランスフォーメーション支援や、買収後の海外企業のターンアラウンド、ガバナンス改革などの案件も支援している。東京大学工学部卒。

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