1. 国内投資の活性化とスタートアップの育成
岸田内閣の4つの主要政策の1つである「新しい資本主義」は、岸田政権発足時より経済政策の要として掲げられてきたものである(2021年10月8日 第205回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説)。「新しい資本主義」の具体的な政策課題は、①構造的賃上げの実現と分厚い中間層の形成(リスキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入、成長分野への労働移動の円滑化、家計所得の増大、資産所得倍増プランの推進、多様な働き方の促進)、②国内投資の活性化(GX(グリーン・トランスフォーメーション)の投資拡大、スタートアップの育成及び公益活動の推進、科学技術・イノベーションの推進、インバウンドの拡大)、③デジタル社会への移行(行政のデジタル化、マイナンバー制度の利活用、デジタル田園都市国家構想の実現、AIへの取組)の3つが掲げられている。
国内投資の活性化の施策の中でも、スタートアップの育成の推進は、経済界からかねてより強い要望が出されていたものであるが、政府の経済対策の柱(「骨太方針2022」(経済財政運営と改革の基本方針 2022 2022年6月閣議決定)の中での、新しい資本主義に向けた重点投資分野)の1つに明記されたのは2022年からである。スタートアップ育成の取組みとして、以下のような説明がされている(首相官邸ウェブサイト 岸田内閣の主要政策01/新しい資本主義)。
「新たな産業構造への転換を進め、持続的な成長を確保していくため、2022年11月に策定した「スタートアップ育成5か年計画」に基づき、新たな参入と再チャレンジの障壁を低くし、スタートアップが成長できる環境の整備に取組みます。スタートアップへの投資額を「2027年度に10倍を超える規模にする」という目標を目指し、①スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築、②スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化、③オープンイノベーションの推進の3本柱の取組を進めます。」
2023年9月27日に開催された、新しい資本主義実現会議(第22回)では、「新しい資本主義の推進についての重点事項」が採択され、スタートアップ育成5か年計画の推進として、以下の4つの目標を掲げている。
■筆者プロフィール■
荒井 優美子(あらい・ゆみこ)公認会計士/税理士
コンサルティング会社、監査法人勤務後、米国留学を経てクーパース&ライブランド(現PwC税理士法人)に入所し現在に至る。クロスボーダーの投資案件、組織再編等の分野で税務コンサルティングに従事。2011年よりノレッジセンター業務を行う。日本公認会計士協会 租税調査会(出版部会)、法人税部会委員。一橋大学法学部卒業、コロンビア大学国際公共政策大学院卒業(MIA)、ニューヨーク大学ロースクール卒業(LLM)。