1. はじめに 日本は米国に次ぐ
アクティビスト大国である。2023年のデータによれば、株主提案を受けた会社数において日本は米国に次ぐ第2位(米国が550社、日本が103社)となっており(注1)、日本における株主アクティビズムが活発な状況にあることが伺われる。その背景には、資本コストや株価に着目した経営手法の広がり、コーポレートガバナンス改革の進展、ESGや人権に対する社会的意識や規制圧力の広がり等がある。また、株主アクティビズムの広がりを背景に国内上場会社のM&Aの取引件数は年々増加しており、2023年には16年ぶりに1000件を超える件数を記録している(注2)。以下では、株主アクティビズムの最前線である米国におけるM&Aアクティビズムや2024年上半期の最新トレンドを紹介した上で、今後の日米における株主アクティビズムの動向について一定の考察を行う。
2. M&Aアクティビズム
■筆者プロフィール■
大久保 涼(おおくぼ・りょう)
長島・大野・常松法律事務所ニューヨーク・オフィス共同代表。1999年東京大学法学部卒業。2006年にThe University of Chicago Law SchoolにてLL.M.取得。その後、2006年~2008年にRopes & Gray LLP(ボストン・オフィス及びニューヨーク・オフィス)に勤務。2014年~2015年に東京大学法学部非常勤講師(民法)。
主な業務分野は、M&A、プライベート・エクイティ投資、買収ファイナンス、宇宙法、テクノロジー、金融レギュレーション、不動産取引などであり、特に日米間のクロスボーダー案件の経験が豊富である。
逵本 麻佑子(つじもと・まゆこ)
長島・大野・常松法律事務所ニューヨーク・オフィスパートナー。2008年京都大学法学部卒業。2016年にHarvard Law SchoolにてLL.M.取得。その後、2016年8月より長島・大野・常松法律事務所ニューヨーク・オフィス勤務。
M&A、コーポレートガバナンス、労働法及びデータプライバシーの分野を中心として、日本及び米国における企業法務全般について国内外のクライアントに幅広くアドバイスを提供している。
伊佐次 亮介(いさじ・りょうすけ)
長島・大野・常松法律事務所ニューヨーク・オフィスアソシエイト。2012年東京大学法学部卒業。2014年東京大学法科大学院修了。2022年Columbia Law SchoolにてLL.M.取得( James Kent Scholar)。2022年より長島・大野・常松法律事務所ニューヨーク・オフィス勤務。国内外のM&A、コーポレートガバナンス、輸出管理を中心とした経済安全保障分野を中心に、現在はニューヨークを拠点として企業法務全般に関するアドバイスを提供している。