[Webインタビュー]

(2014/11/12)

【第47回】運用者から見た「日本版スチュワードシップ・コード」の意義と企業の対応について

光定 洋介(あすかアセットマネジメント チーフファンドマネージャー、あすかコーポレイ
トアドバイザリー 取締役 ファウンディング・パートナー)
田中 喜博(あすかコーポレイトアドバイザリー 取締役 エグゼクティブ・ディレクター)
  • A,B,C,EXコース



「日本版スチュワードシップ・コード」導入の背景

 2014年2月27日に金融庁が「『責任ある機関投資家』の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~」を策定・公表しました。その内容は、責任ある機関投資家として企業との対話の在り方や議決権行使に関して基本行動ルールを公表するなど7つの原則が中心になっています(表1参照)。9月時点で本コードの「受入れ表明」を行った機関投資家のリストは以下の通りとなっていますが、本コードが策定された狙いはどのような点にあるのでしょうか。

 

 

 ・ 信託銀行等:6
 ・ 投信・投資顧問会社等:109
 ・ 生命保険会社:17
 ・ 損害保険会社:4
 ・ 年金基金等:17
 ・ その他(議決権行使助言会社他):7 
  合 計 : 160 


光定 「日本版スチュワードシップ・コードの基となったのは、英国のスチュワードシップ・コードですが、英国のコードは歴史的には会社の不祥事を発端とする『株主責任論』が源泉となっています。具体的に申しますと、80年代の英国で社会問題となったBCCI事件やマックスウェル事件などの会社不祥事が発端となって92年にキャドバリー報告書というものが公表されました。この報告書の作成には代表的な機関投資家が参加していることを見てもわかるように、英国ではコーポレートガバナンスの議論が始まった初期の段階から機関投資家の責任が注視されてきたのです。その後、01年に英国財務省からマイナース報告書というものが出されて機関投資家の責任論が論じられたりしたのですが、議論は停滞しました。本格的に議論が進展したのは08年9月のリーマン・ショックの後で、金融機関のコーポレートガバナンスを見直すために公表されたウォーカー報告書(09年)を基にスチュワードシップ・コードが策定されました。

 一方、米国では、経営者の責任を追及するアクティビズムという形で広義のエンゲージメント(企業との対話)が繰り広げられてきました。米国のエンゲージメントは80年代後半頃からカルパースを中心とした年金ファンドから始まったといわれています。その後、2000年代に入ってエンゲージメントはヘッジファンドによるアクティビズムへと変化していき、経営者責任の追及からエンゲージメントが開始されたというのが特徴です。このように英米ではスタートが全然違っていたのですが、しだいに議論が集約されて、英米共に大きく分けて2つ、つまり戦略・目標提示型とガバナンス改善型で企業に対するエンゲージメントが行われています。

 日本版スチュワードシップ・コードは、ご存じのようにアベノミクス下の『日本再生戦略』を背景に導入されています。企業の中長期的な成長のためにエンゲージメントが行われることが推奨されていますが、基本的には大きく2つの目的があると思います。1つ目は、企業が不祥事を起こさないようにしっかりとしたガバナンスをしなければいけないということ。もう1つは、中長期的な企業の成長を後押しすることです」

 

 

 

 

 

 

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