[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2023年9月号 347号

(2023/08/09)

第221回 百貨店業界 ~市場縮小の中で大型再編(2007~2008年)後の大手百貨店はどう動いてきたか(第1回)

澤田 英之(レコフ 企画管理部 リサーチ担当)
  • A,B,EXコース
1.はじめに

 本稿では激変する事業環境の中で大手百貨店がどのように事業を展開してきたか、M&Aに触れつつ数回に分けて述べてみたい。

2.大手百貨店の統合発表が相次いだ2007年

 2007年、大手百貨店が相次いで経営統合を発表した。

 2007年3月、当時百貨店4位であった大丸と同9位の松坂屋ホールディングスが持株会社形態による経営統合を発表し、同年9月にJ.フロント リテイリングが発足した。

 同じく2007年3月、阪急百貨店と阪神百貨店が持株会社形態による経営統合を発表し、同年10月にエイチ・ツー・オー リテイリングが発足した。

 そして、同年8月には当時百貨店5位であった伊勢丹と同4位の三越が持株会社形態による経営統合を発表し、翌2008年4月に三越伊勢丹ホールディングスが発足した(統合発表時の大丸と三越の順位が同じ4位なのは2007年2月期決算で大丸の売上高が三越の売上高を上回ったことによる)。

 1990年代、バブル経済がピークを迎えて以降百貨店の売上高は低迷に向かい、日本百貨店協会によると1991年に9.7兆円だった全国百貨店売上高は2007年には7.7兆円に減少していた。当時既に百貨店が苦境に追い込まれた原因として、専門店やネット通販の台頭による販売チャネルの多様化、デフレ経済継続に伴う低価格指向の強まり、また、消費行動における「モノ消費」から「コト消費」への変化などが挙げられていた。

 その後、2008年にはリーマン・ショック、そして2011年には東日本大震災が発生し、小売業界にとっては厳しい事業環境が続いた。こうした中でも、コンビニやドラッグストア、衣料専門店などは売上を伸ばしてきたが、全国百貨店売上高はリーマン・ショック後に6兆円台に減少したまま低迷が続いた。

 百貨店の店舗数をみると


■筆者プロフィール■
澤田 英之(さわだ・ひでゆき)
レコフ 企画管理部 部長(リサーチ担当)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A研究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。

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