本多元 ベインキャピタル・ジャパン マネージングディレクター
1781店舗を展開するトップ企業 携帯電話の販売代理店最大手のティーガイアが、ベインキャピタルによる一般株主対象の
TOBと大株主である住友商事(株式の41.8%を保有)、光通信グループ(同28.9%を保有)からの株式買付を経て買収され、2025年3月に上場廃止となった。買収総額は1400億円超と見られる。TOBを巡っては、買収による
非上場化の観測報道によって、2000円を切っていた株価が高騰し、4020円の上場来高値をつけるという事態になった。結局、2024年10月1日〜11月20日に実施されたTOBは9月27日の終値3635円を26.55%下回る価格設定という異例のディスカウントTOBとなり話題を呼んだ。
ティーガイアは2008年に三井物産子会社だったテレパークと、三菱商事と住友商事が折半出資していたエム・エス・コミュニケーションズが合併する形で誕生した。その後、三井物産と三菱商事は保有株を売却し、住友商事が大株主となっていた。
ティーガイアは、1781店舗(キャリアショップ1006店舗、その他ショップ775店舗 2024年3月時点)を擁する業界トップ企業だが、売上高はピークの2013年3月期7368億円から減収傾向が続き、24年3月期は4489億円、連結純利益は前期比12%減の70億円となっていた。
背景には、総務省が2016年4月に打ち出したスマートフォンの「実質ゼロ円」での販売に対する規制や、スマートフォンの買い替えサイクルの長期化により、携帯販売の経営環境が厳しくなっていることがある。
そこで、ティーガイアは2024年5月に希望退職者を約200人募集すると発表。新中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)を打ち出し、事業ポートフォリオの見直しなどを進めて、純利益100億円以上を目指すという目標を掲げた。
一方、大株主の住友商事は、成長投資に力を入れるとともに、2027年3月期までの3カ年の中期経営計画で、8000億円の現金創出を掲げ資産売却を進めている。ケーブルテレビ最大手のJCOMにKDDIと折半出資するなど、大手商社のなかでもメディア・デジタル事業に力を入れているが、ティーガイアの利益水準を引き上げるのは難しいと判断し、売却に踏み切ったと見られる。
ティーガイアの買収を担当した本多元 ベインキャピタル・ジャパン マネージングディレクターにディスカウントTOBの経緯、今後の再成長戦略について聞いた。
<インタビュー>
新中計の目標はすでに達成
本多 元(ベインキャピタル・ジャパン マネージングディレクター)
- <目次>
- ディスカウントTOB実施の経緯
- 携帯電話販売市場の見通しとティーガイアの魅力
- 新生ティーガイアの役員構成
- 再成長戦略への支援策
- 業界再編とM&A