[M&A戦略と会計・税務・財務]
2013年12月号 230号
(2013/11/15)
日本企業のグローバル展開が加速している昨今、アジア戦略は日本の企業にとって非常に重要な検討事項の一つとなっています。その中でも日本および中国と繋がりの強い台湾への投資は注目を浴びています。
従来より日本と台湾の関係は非常に密接で、日本は台湾にとって2番目の貿易パートナー、台湾は日本にとって5番目の貿易パートナーであり、人の往来も年間約250万人に及びます。
また台湾企業はその高い技術力を背景に、半導体、PC、電子部品、太陽光エネルギー、液晶ディスプレイなどの分野において高い国際競争力を有しており、当該分野における有力企業は、アジア、北米、欧州など世界各地に拠点を設置し、生産活動を行うとともに販売網や調達ネットワークを拡げています。また流通・飲食産業においては、中華圏とのネットワークを生かし、多くの日系企業が台湾企業との提携によって中国をはじめアジア各国に進出しています。(「図表1」参照)。
日系企業の台湾投資に注目すると、2012年度の日本からの台湾投資は過去最高であった2011年度を上回る投資件数を記録しました。また昨年は、報道されているように鴻海(ホンハイ)精密工業や中国信託商業銀行のような大手台湾企業が日系企業への出資を検討しているという、以前は見られなかった提携パターンが見られます。この他にも台湾富裕層による日本不動産への投資も大きく増加しているといわれています。
このような投資件数の増加とともにM&Aを用いた経営戦略を選択し、よりスピード感を持った投資効果を目指した案件も増加しています。本編では台湾におけるM&Aの留意点を税務、法務、会計の観点よりご説明していきたいと思います。
1. 税務における留意点
1.1 投資ストラクチャーにおける検討
(買収側)
a. タックスヘイブン
台湾においては、日本におけるタックスヘイブン対策税制にあたる税制が現在のところ存在せず、多くの台湾企業はタックスヘイブン国の税メリットを享受できるように投資ストラクチャーや商流を組み立てています。一方、日系企業の場合は、日本のタックスヘイブン対策税制により基本的にタックスヘイブン国の利益は日本の利益と合算され課税されること、株主や債権者への説明の観点からタックスヘイブン国に関連会社を有することは敬遠されがちです。よって、日本の企業が台湾企業を買収した場合、当該関連会社を清算することを選択する会社が多くみられます。この場合、それまでにタックスヘイブン国の事業体に留保された利益が台湾で課税対象となる可能性、および当該事業体の株式を譲渡する際の譲渡益課税の影響額などについて検討する必要があります。
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