1. 「新しい資本主義」による経済政策 2022年6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(骨太方針2022)が閣議決定された。骨太方針2022では、それまでの、新型コロナウイルス感染症の克服やグリーン社会の実現と言った目標に加えて、ロシアのウクライナ侵略や輸入資源価格の高騰等の経済社会の構造を、「新しい資本主義」の起動により、変化に対してより強靱で持続可能なものに変革するものと位置付けている。
「新しい資本主義」は、岸田内閣発足(2021年10月4日)より1か月後に閣議決定された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(2021年11月19日閣議決定)で、成長と分配の好循環を実現する分配戦略の具体的な施策として、①賃上げの推進(賃上げを行う企業への税制支援の抜本的強化、下請取引に対する監督体制強化等)、②労働移動の円滑化・人材育成の強力な推進、③働き方改革等による多様な働き方の推進、多様な人材の活躍などの支援により、民間部門における分配強化に向けた強力な支援を掲げている。
骨太方針2022で掲げられた、新しい資本主義に向けた重点投資分野の一つである「人への投資と分配」では、概ね「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」の分配戦略に沿った方針が示されているが、「人的投資が企業の持続的な価値創造の基盤である点について株主との共通の理解を作り、今年中に非財務情報の開示ルールを策定する」として、人的投資の開示を義務付ける姿勢を明らかにした(図表1参照)。この点では、賃上げ促進税制の適用要件となったマルチステークホルダー方針の開示は、有価証券報告書での人的投資の開示に先行するものと言える。
【図表1 新しい資本主義に向けた重点投資分野】

(出所:経済財政運営と改革の基本方針2022 概要)
2. 賃上げ促進税制の抜本強化 賃上げを行う企業への税制支援の抜本的強化は、