レコフデータは1985年以降のM&Aデータベースを構築しています

キーワード 一覧

[M&A戦略と法務]

2020年1月号 303号

(2019/12/16)

買収・投資実行後の役職員へのインセンティブとしてのストックオプションの付与

~税制適格型新株予約権と有償ストックオプションとの比較~

中村 浩(TMI総合法律事務所 弁護士)
第1 はじめに

 ストックオプション制度は、企業価値向上による株価の上昇が役職員の利益と直接結びつくことになるので、M&A後に買収先・投資先の企業価値を高めることを目的として、実務上多く利用されている。本稿では、その税務上の優遇措置のため、M&A後の買収先・投資先の役職員へのインセンティブとして実務上利用されることが多いストックオプションである税制適格型新株予約権について、要件・効果を確認するとともに、実務上の取り扱いの留意点を俯瞰する。また、税務上の取り扱いが税制適格型新株予約権と同様となるとされている、有償ストックオプションを解説し、税制適格型新株予約権と比較検討する。


第2 税制適格型新株予約権(無償ストックオプション)

1. 概要

(1) 要件

 税制適格型新株予約権とは、租税特別措置法(以下「租特法」という)29条の2に定める要件を充足することにより、その行使により取得された株式の取得に係る経済的利益に所得税が課されないもの、つまり、取得した株式を譲渡した際に初めて課税が生じるものである。

 税制適格型新株予約権となるための要件として、①付与対象者は、大口株主及びその親族等といった特別関係者を除く、新株予約権を発行する株式会社又はその子会社等の取締役、執行役又は使用人である個人であること(注1)、②新株予約権の付与に係る取締役等と株式会社間の契約で、a. 行使期間(付与決議日後2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過する日まで)、b. 権利行使価額の年間の合計額(1200万円以下)、c.権利行使価額、d.新株予約権の譲渡禁止、e. 株式の交付が会社法238条1項等に定める事項に反しないこと、f. 金融商品取引業者等との間で交付される株式の保管の委託等がされることがそれぞれ定められていることがある(租特法29条の2第1項、租特法施行令19条の3第3項、第4項)

(2) 税務上の効果

 税制適格型新株予約権の行使により取得した株式について、その取得に係る経済的利益に所得税が課されず、当該株式を譲渡した場合の所得に申告分離課税(租特法37条の10等)が適用される。つまり、税制適格型新株予約権を行使して株式を取得した場合の経済的利益(以下の図では1000円-100円=900円)については非課税とし、その取得した株式を譲渡した時点で、当該譲渡による所得への課税として取得時価額と譲渡価額)の差額(以下の図では1500円-100円=1400円)に対して申告分離課税が課されることになる。

2. 会社法・金商法上の留意点

(1) 有利発行該当性

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

[無料・有料会員を選択]

会員登録

バックナンバー

おすすめ記事

ベトナムのPPE業界

スキルアップ

[【クロスボーダーM&A】ベトナム投資の基礎知識 [ベトナムマーケット概要](ワールディング)]

NEW ベトナムのPPE業界

谷口 正俊(株式会社ワールディング 代表取締役社長)

第7回 事業買収・売却におけるスタンド・アロンイシュー(HR)、従業員転籍への対応

M&A戦略・実務

[ニューノーマル時代の日本企業M&Aの指針]

NEW 第7回 事業買収・売却におけるスタンド・アロンイシュー(HR)、従業員転籍への対応

白川 雄一(マーサー ジャパン M&Aアドバイザリーサービス部門 マネージャー)

サステナブルに対するアパレル業界の勘違い ~「気付いたらサステナブルになっていた」を目指す

速報・トピックス

[藤原裕之の金融・経済レポート]

NEW サステナブルに対するアパレル業界の勘違い ~「気付いたらサステナブルになっていた」を目指す

藤原 裕之((同)センスクリエイト総合研究所 代表)

M&A専門誌 マール最新号

アクセスランキング


M&A専門誌マール

M&A専門誌マール

「MARR(マール)」は、日本で唯一のM&A専門誌で、「記事編」と「統計とデータ編」で構成されています。

レコフM&Aデータベース

レコフM&Aデータベース

「レコフM&Aデータベース」は、日本企業のM&Aなどどこよりも網羅的に、即日性をもって構築している日本で最も信頼性の高いデータベースです。

セミナー

セミナー

マールの誌面にご登場いただいた実務家、研究者などM&Aの専門家を講師としてお招きし、成功に導くポイント、M&Aの全体プロセスと意思決定手続き、実証研究から見た分析などについてご講演いただきます。

SPEEDA RECOF

SPEEDA RECOF

「SPEEDA RECOF」とは「レコフM&Aデータベース」と株式会社ユーザベースが開発・運営する企業・業界情報プラットフォームである「SPEEDA」がシステム連携します。

NIKKEI TELECOM日経テレコン 日経バリューサーチ

日経テレコン

2002年7月に、日本経済新聞デジタルメディアが運営する日経テレコンの「レコフM&A情報」を通じてM&Aデータの提供を開始しました。

M&Aに関するお問い合わせ、ご相談は
こちらからお気軽にお問い合わせ下さい。

お問い合わせフォーム