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[M&A戦略と法務]

2021年3月号 317号

(2021/02/15)

学校法人のM&Aを巡る近時の実務動向

渡辺 伸行(TMI総合法律事務所 パートナー 弁護士)
畠山 大志(TMI総合法律事務所 弁護士)
1.はじめに

 少子化に伴う18歳人口の減少によって、多くの大学では入学定員充足率の大幅な低下が見込まれている。この状況を改善するため、大学進学者数(需要サイド)の減少に合わせた大学(供給サイド)の統合・再編のニーズが高まっているが、その際、学校法人のM&Aは極めて有効な手段となる。また、学校法人のM&Aは、業界再編の局面以外にも、各学校法人が有する設置校の強み・特色を掛け合わせ、教育研究力を強化する際にも有効な手段となり得る。

 学校法人のM&Aのスキームとしては、(1)合併(吸収合併、新設合併)、(2)設置者変更(注1)、(3)理事の交代の3つがある(これらスキームの詳細については別稿(注2)が詳しいので、そちらを参照されたい)。なお、(2)設置者変更については、従前、学校単位でしか認められていなかったが、令和元年5月の関連法令の改正によって、学部学科単位での設置者変更も認められるようになり、実際、新制度を活用した事例も出てきている(注3)。また、国公私の枠組みを超えた連携を可能とするため、現在、大学等連携推進法人制度(注4)の導入が検討されており、制度化されれば新たなスキームの1つにもなり得るだろう(注5)。

 学校法人のM&Aは、その目的に応じて、(ア)大学間における学問領域の補完を目的とした水平型統合と、(イ)中学校・高等学校の系列校化・附属校化など、設置校の補完を目的とした垂直型統合とに大別できるが、それぞれの事例も蓄積されつつある(注6)。

 以下では、学校法人のM&Aについて、上記(1)~(3)のスキームごとに近時の特徴的な事例を紹介するとともに、実務上のポイントを解説する。


2.合併の事例(水平型統合)

(1) 概要(注7)

 学校法人大阪医科大学と学校法人大阪薬科大学は、少子化を踏まえ経営基盤の安定を図るなどの狙いから、平成23年8月頃から、大阪医科大学と大阪薬科大学の統合に向けた協議を開始した。両法人は、平成28年4月、学校法人大阪医科大学を存続法人、学校法人大阪薬科大学を消滅法人とする吸収合併を行い、同時に、法人名を学校法人大阪医科薬科大学に変更した。その際、医学・薬学・看護学の連携によるチーム医療教育の推進に向け、教育面の統合・融和を図っていくことなどが今後の課題であり、信頼関係の醸成を待って、5、6年後に大阪医科大学及び大阪薬科大学の統合を目指すとした(注8)。

図1
 その後、令和2年3月に、学校法人大阪医科薬科大学は、文部科学大臣に対し、大阪医科大学への薬学部及び薬学研究科の設置について設置認可申請を行い、同年10月、文部科学大臣より設置認可を受けた。これにより、大阪医科大学と大阪薬科大学が統合し、令和3年4月に大阪医科薬科大学が誕生する予定となっている(大阪薬科大学は廃止される予定)。

(2) 実務上のポイント

 本事例は、医学部及び看護学部を有する大阪医科大学と薬学部を有する大阪薬科大学が相互補完的に統合することで、医療系総合大学として教育研究力を強化しようとしたものであり、水平型統合の事例といえる。

 スキームとしては、学校法人大阪医科大学を存続法人とする吸収合併が採用されているが、合併の効力発生日に法人名が「学校法人大阪医科薬科大学」へと変更されており、当事者の公平感に配慮するとともに、対外的にも対等合併であることをアピールするための実務上の工夫として参考になる。

 法人の合併から大学の統合までに約5年間の経過期間が設けられているが、学内・組織内での十分な統合作業時間を確保することのほか、学生に対し自身が所属することとなる大学及びその名称について十分な周知の機会を与える配慮と想定され、この点も実務上参考となる。

 また、大学統合に係る認可にあたっては、大阪医科大学の薬学部・薬学研究科の設置に伴い、大阪薬科大学の薬学部・薬学研究科を廃止することで、審査を簡略化する特例(注8)の適用を受けているようである。このような特例制度の利用も認可に係る時間・労力削減の観点から検討に値するといえよう。


3.合併の事例(垂直型統合)

(1) 概要(注10)

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